今日は『Fantôme』発売6周年記念日。6年と聞くともう完全に歴史の一部という感じだわね。最近だと「『Fantôme』の頃はまだファンじゃありませんでした」という人が幾らでも居て、なんだか久し振りに会った同級生にもう孫が出来てたみたいなそんな感覚に囚われてるわ。(?)
と同時に今日は『Be My Last』発売17周年記念日でもある訳で。6年ですら歴史の感覚なのに17年とか先史ですよね最早。記憶が化石。
『Be My Last』といえば、発売当時最も「音のいい」ヒカルの音源だった。その直前の『EXODUS』が音質二の次作品だった為余計にその差が際立っていた。理由は、非常にシンプルに、当時としては珍しく高いサンプリングレートで録音されていた為だ。今でいうハイレゾ音源でも最高品質といえる24bit&192kHzでね。まずそれがあって音がよかった。
もうひとつ、『Be My Last』という楽曲には演奏のトラック数が少ないという特徴もあった。要は演奏楽器がいつもより少なかった(ヒカルさんは放っといたら『Animato』のよつに4つも5つも楽器を重ねたがる)訳だ。それによってヴォーカルに振れる情報量が増大し結果まるで耳元で囁かれているようなリアルなサウンドが実現した。
楽器が少ないほどヴォーカルがリアルになるんだったら、楽器が全くなくなったらもんのすごくリアルなヴォーカルが聴けるんじゃね?と思うのが人情だ。果たして本当にそうなのだろうか…?という疑問に、まもなく7インチアナログ盤2枚組『First Love/初恋』が答えてくれるかもしれない。そう、2曲のアカペラ・ミックス、演奏なしヴォーカルのみの音源がリリースされるのでしたね。
これ、理屈では2トラックの占有する情報量を総てメイン・ヴォーカル(と必要なバックコーラス)が持っていく訳で、それだけでかなりの音質アップが期待出来るのだ。が、どこからミックスし直すかで結果は変わってくるだろう。御存知のように宇多田ヒカルのヴォーカル&コーラストラックは48を超える音源から構成されている。これを謂わば無理矢理僕らが普段聴いてる2トラックのステレオ音源に落とし込んでいる訳で、その作業過程では48トラックを24トラックに、24トラックを12トラックに…する過程がある訳でその都度情報量は失われていっている。この気の遠くなるようなミックスの作業のうちどこからやり直したかで今回のアカペラ・ミックスの音質とその評価が決まるだろう。これは聴いてみるまでわからないわね。
しかし、もし手間暇掛けてミックスし直してアカペラを作ったんだったら、それこそアナログ盤限定にせずに空間オーディオ対応のデジタル音源もリリースした方がよかったんとちゃうかな。いや勿論、こちらとしてもアナログ盤を再生するのは気を遣うので(だってあれ針で盤を“擦って削って”再生してるんだもんねぇ)、気楽に再生できるデジタル音源でアカペラ・ミックスを堪能したいというのも当然あるんだけど、単純に音質面だけとっても、今回宇多田ヒカル初の空間オーディオ進出なのだから(って非商用であればSONYの360Rが既にあるんだけどね)、アカペラ・ミックスでその凄味をダイレクトに伝えた方がよかったんじゃないのかな。
でもま、ここだけの話、小声で宜しくですが、生産限定のアナログ盤が大体売り切れたくらいのタイミングでアカペラミックスの空間オーディオ音源がデジタル・リリースされる算段になっているかもしれないですからね、ここらへんは色々様子見って感じでいいんじゃないですかね。私はどうせアナログ盤買うんですけどもっ!