無意識日記々

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「なる」と「する」⑧

「母」という動機の源泉を喪い一時的に曲が書けなくなったヒカルは復帰を諦めかけるところまでいった。そこから「母を喪った事」自体を動機に変えて前に進んできた。今までも「君」や「あなた」の暗喩の中で母との関係性を素材の一つとして扱ってきたが、それをかなりわかりやすい形で歌詞に盛り込むようになった。居るうちは隠して、居なくなったら顕した。ちょっとほろ苦く皮肉かもしれない。

モチーフの変化としては、例えばデビュー曲の『time will tell』における『太陽だって手で掴めるぐらい近くに感じられる』の一節に代表されるようにそれまで母を太陽として表現してきていたのが、『花束を君に』にある過去形で表された『僕の太陽だったよ』を経て、『道』の『消えない星』や『大空で抱きしめて』の『天翔る星』にみられるように、徐々に母を星として表現するようになってきた点が挙げられる。この変化についても留意しなければなるまい─という話からまた次回。