無意識日記々

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声に出さずに秘めたる想いを伝えた偶発的手法

『Laughter In The Dark Tour 2018』でのヒカルのパフォーマンスは、当然ライブバージョンということでところどころスタジオバージョンとは歌唱の構成が異なる。中にはまるごと歌わなかった箇所もあったりする。

Prisoner Of Love』の最後もそれにあたる。ヒカルはラストセンテンスの『一人にさせない』をはっきり歌わない。そのこと自体は構わないのだが、これがNetflixの動画になると英語訳字幕がついてくるのだ。何が起こったかというと、ヒカルはその箇所を歌っていないのにその『一人にさせない』の訳にあたる『I won't let you be alone』の字幕が画面上に出てしまっていたのである。

すわミスか、と即断するのは難しい。歌詞は著作物。ライブ・アルバムのブックレットでもそうなのだが、明らかに歌われていない部分があっても一個の著作物として掲載する以上ひとつのまとまりとして扱わねばならず、おいそれとは変更できない。故にライブ・アルバムのブックレットでもスタジオ・バージョンのまま歌詞が掲載されるのが普通だ。

字幕の場合も同じかどうかは知らないが、兎も角、現実としてラストセンテンスの字幕は画面上に出ている。それを見て違和感を感じた人が出ても不思議ではなかろうよ。

しかし私の場合、その字幕が出た時に「これはいい効果だ」と感じてしまった。それはまるで、あたかもヒカルが口に出さずに心の中で『一人にさせない/I won't let you be alone』と呟いたかのように感じられたからである。字幕によって心の中のモノローグを補完していると捉えると寧ろ歌ってしまうよりより強い決意、秘めたる決意としての色合いが鮮明に表現されている気がして何とも詩情のある効果が出ているように感じられたのだ。偶発的だろうとはいえ、なかなかに感銘を受けてしまったよ。

なので、皆さんもそのつもりで鑑賞し直してみては如何だろうか。ちょっと俯いたヒカルの心情が字幕を通してのみ伝わってくるかと思うとまた違った楽しみ方が出来ると思いますですよ、えぇ。