『DISTANCE』の伸びやかなメロディを聴いているとあー確かにこれはバラード向けだわと今なら思えるが当時は全くそんな事考えてなんてなくて、勿論『FINAL DISTANCE』という“アルバムタイトル曲をシングルカットかと思いきや全く違う何か”に触れた時は驚愕したものだった。6曲入りEPというパッケージで聴いた時確かにこれは『DISTANCE』の方がカップリング曲だなと妙な納得をした覚えがある──当時の最新アルバムのタイトル・トラックなのに。「主役交代」なんだと思った。更にまさかその『FINAL DISTANCE』が次のアルバムに収録されるだなんてこれまた夢にも思わなかったが実際に『DEEP RIVER』アルバムを聴くと「そりゃここに『FINAL DISTANCE』がなくっちゃね」と痛感したのだから、いやはや、当時のヒカルのセンスと思い切りの良さには脱帽でしたよ。…なんていう思い出話。
以後もヒカルはアップテンポの曲とそのバラード・バージョンと呼べる組み合わせを幾つか手掛けている。いちばん有名なのは『Flavor Of Life』だろうがその前に『Passion -after the battle-』もあったし、その後に出た続編、姉妹曲ともいえる『Prisoner Of Love』も『Prisoner Of Love -Quiet Version-』とのカップリングが少しそういう風合いだ。何れもただのリミックスとか思っていると人生に絶望的な後悔を齎すであろう必聴のバージョンとなっている。
今後もそういった展開があるだろうか。最近の別バージョンといえば『Too Proud』か。ツアー開始とともに『L1 Remix』を公開しすわ国際色豊かなコラボレーションを幾つも実現させる気かと思わせておいて実際のツアーではスタジオバージョンでゲストのJevonに歌わせていたラップパートをヒカル自身の日本語で塗り潰しにかかった。本来であればゲストが無しになったら落胆するもんなんだけどファンはヒカルが歌ってくれて大喜び。なかなか心憎い持っていき方だったね。
……それくらいかなぁ。『誓い』/『Don't Think Twice』も『Face My Fears』も、別バージョンを作った訳では無い。というか、別バージョンを作る代わりに2曲作った訳だ。『Face My Fears』なんかフルアコースティックのバラードバージョンにしたらどうなるだろうという興味は尽きないがツアーでそういう装いを添えるのもいいのかもしれない。
逆に、バラード曲をアップテンポに持っていくのはないのかな。『Flavor Of Life』に関しては先にバラードバージョンが発表された為あとからアップテンポになったケースなのだが自分の印象としてはそこまで鮮烈に変わったという感じはしなかった。寧ろやっと楽曲本来の“意図”がよくわかって喜んだという感じだった。
『誓い』のリズムを入れ替えて少しアップテンポ風味にしたり、『Forevermore』や『Play A Love Song』をバラードにしたり、というのはわかりやすいかもしれない。そういうのがまた聴いてみたい。
こうやっていると諸々アイデアが次々に出てきそうなので、あれですよ、来年でいいから20年ぶりにアンブラグドショウをやってくれんかね。スナックひかるの復活。いやはや、でも、相変わらず凄い倍率になるだろうな。音漏れのある会場を希望したいぜ。