折角なので前回の続き。もし仮に1番と2番で視点が切り替わっているとするなら、つまり『私』と『あなた』が入れ替わっているのなら、では、3番の歌詞は一体どちらの視点から歌われているのか?という疑問が浮かび上がる
これはもう先に書いてしまおう。
「二人とも」の視点からだろう。
恐らく、ブレイク後のサビのリピートからが「二人の言葉」なのだ。
『ずっと聞きたくて聞けなかった、気持ちを
誰を守る嘘をついていたの?』
ここからね。どちらも相手の気持ちを聞きたくても聞けなかった。どちらも、自分と相手を守る嘘をついていた。だから最後、「ついていたの」の所、バックコーラスで、二声で強調されるのだ。
それは更に次のパートで徹底される。ここだ。
『逃したチャンスが私に
与えたものは案外大きい
溢した水はグラスに返らない 返らない
出会った頃の二人に
教えてあげたくなるくらい
あの頃より私たち 魅力的 魅力的』
このパート、まるごとヒカルの声が左右でユニゾンを繰り返す。ステレオとはいえ、ダブル録音ってやつだね。二人の気持ちが合わさったパートなのです、ということを二つの声を左右に設える事で明確にしたアレンジだといえる。
こう解釈すると、『Time』の歌詞を一人称のみの視点で読んだ時の違和感が解消される。「逃したチャンス」とか「覆水盆に返らず」とか歌ってる割に『私たち魅力的』と歌っているのはえらく楽観的過ぎやしないかと思えていたのだが、これが「二人の合意」の文章だと思えばかなり自然な流れになる。つまり、どういうことかというと、この二人は結ばれたのですね。おめでとう。
となると、次の
『友よ 失ってから気づくのはやめよう』
の真意が明確になる。もうただの友達以上の関係性になったってことだな。
…と、いうのが「もし『Time』の歌詞が二人それぞれの視点を歌ったものだとしたら」の場合の解釈になる。1番と2番でそれぞれの孤独な想いを描写して、『誰を守る嘘をついていたの?』の所で互いの想いを打ち明けたのだ。故に『逃したチャンスが』以降は二人のいちゃいちゃユニゾンパートなのである。失ったのは「ただの友達関係」ということになるね。そうなれば遠慮無く、
『時を戻す呪文を君にあげよう』
とお互いに言えるようになるわけだ。1番2番とはもう状況が違うのだから。
…だが、勿論これは『Time』の全部でもなければ全貌でもない。例えば、ならば楽曲最後に加えられている『If I turn back time, will you be mine?』(“もし時を戻したら、あなたは私のものになっているの?”)という歌詞は一体何なのかという疑問が浮かび上がってくる。これは、二人の視点からだとうまく解釈できなくなるよね。そこらへんの話からまた次回……書けたらいいんだけど。(笑)