無意識日記々

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異世界線を混ぜる既視感

『Time』のMVはご存知の通りノスタルジー満載で、どこをとっても見た事があるようなカットが連続する。そもそも『Coming Soon』の段階で「横顔が16歳だ」と言われていたのだから意図的だ。

ただ、同じくノスタルジックだった『Goodbye Happiness』MVと違うのは、あからさまにそれを指ささない所だ。GBHMVでは「あ、これは『traveling』、こっちは『Automatic』だね」とわかりやすく指摘出来たが、今回の『Time』は複数の思い出が交錯する不可思議な感触が特徴なのだ。

例えば黄色いのを着て現れた場面では「これは『Movin' on without you』……と思わせておいて『Automatic』、かな??」みたいな感想になる。他の場面も『First Love』…のような、だったり『Addicted To You』……っぽいかなぁ?だったり、はっきりしない。

これが今回の狙いなのだろう。サイケデリックなエフェクトも満載で、どこか「夢」をコンセプトにしている感じがする。そもそも、『Time』自体が“if...”をテーマにしており、もしこうだったら、とかもしこうなってなかったら、とかの仮定の過去と未来について語る歌だ。その「世界線の重ね合わせ」のフィーリングを、“混ぜ合わせたノスタルジー”で表現しているように感じた。夢の中で、昼間見た関係ない事柄同士を結びつけちゃうことあるでしょ? ウルトラマンが洗濯物畳んでるような。(なぜ思いついた喩えがそれなんだ俺) そういうのを映像化したものがこの作品なのだと。であるからして、このMVは観過ぎると記憶の勘違いが多発しそうな気がする。そもそもこの時のヒカルが何歳なのか、後から振り返った時に誤解してる可能性がかなりあるだろうしね。

これは、もしかしたら今年の世情も反映されているのかもしれない。よもや一年前はオリンピックが延期だ中止だという騒ぎになっているとは思いも寄らなかった。パンデミックで都市封鎖とかSFの、作り話の世界でしょと思っていたことがこうやって現実に起こっている。まるで御伽噺の中に迷い込んだような、そんなフィーリング。世界全体で共有できるかもしれないこのフィーリングを『Tiime』のMVは捉えてるのかもしれないなと、私はそう感じているのでありました。例えば、明日朝起きたら、今日の夜観た筈のMVがまるで違ったものになっていたりするかもしれないね……。