無意識日記々

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PiNk BlOoD〜♪ pInK bLoOd〜♪

『PINK BLOOD』の今迄に無い点は、タイトルを歌う際のメロディが不定形なことだ。

リフレインというのは言葉とメロディが分かち難く結びついている。例えば、史上最強のワンワード・リフレインである『traaaaavelin'♪』なんかはこの言葉と音程でないと成り立たない。楽曲中ずっとこれだ。カップリングのリミックスでも他のパートは大胆に変えてもここは変えない。

ところが『PINK BLOOD』での『PINK BLOOOOOOD♪』は千変万化なのである。何種類メロディがあるか数え切れなかったよ。この3分17秒の間に繰り返す回数は多分30〜36回くらいだとは思うんだけども。

そして、音の出処を左右に揺らしてくるんだこれがまた。なんと言えばいいのか、そこらじゅうを舞っているような、身体にまとわりついてくるような。音程も上へ下へと落ち着かない。

ひとつ単純に連想するのは、歌詞のまんま『BLOOD』、血液のイメージがあるのかなと。血液は身体中を上下左右クマなく回り続ける。全身を巡って心臓に還って来て肺で再生されてまた全身を巡るという周期の繰り返し。『PINK BLOOD』MVのメイン・コンセプトが「球と円環」であり、時間方向の円環は「周期」であった事を想起しよう。その「周期性」を表現する為に『PINK BLOOD』ではリフレインを左右に振っているのかもしれない。

「周期性」の表現としてMVでは「人間万華鏡」と「合わせ鏡」が用いられていた。いずれにせよそれらは鏡であって、コーラスを左右に振るのは「鏡像対象」の比喩があったのかもしれない。ただ左右に同時に鳴らしても真ん中から聞こえてくるだけだから、こうやって左右に定位を細かく動かせば明滅の中に左右を感じるようになるというね。

勿論、ヒカルが曲だけを書いた時点での構想がどこまでMVに反映されているのかはわからない。しかし、アニメのオープニングですらヒカルの書いた歌詞の含意をよくよく咀嚼して作られていたのだから、MVは更に突っ込んだ解釈をヒカルから聞いている可能性がある。故にMVの映像から元々の楽曲の歌詞の含意を推理するのはそこまで突拍子も無い事では無いと考えたい。

歌の背後でも執拗に『PINK BLOOOOOOD♪』と歌い続けるのも、「人が生きている間血液は絶え間なく巡っている」事の表現だと考えれば合点がいくようにも思える。ふむ、なくはないかなと。

勿論、中心の比喩に『PINK BLOOD』=「涙」というのが鎮座しているのは変わらない。あクマで、不定形のリフレインという珍しいサウンドに対する解釈としての話だ。そしてそれが、メロディが不定形である事への答にもなる気がしている。『PINK BLOOD』という二語の並びに、ヒカルは、固定化されたイメージをつけられたくなかったのではないだろうか。聴いた人がそれぞれ多義的に解釈してくれるように、よりミステリアスに、より捉えどころなく歌った為にこんなアドリブ満載なテイクになったんじゃないかなと。それぞれが自分の耳と心で聴いて、それぞれが持つに至った自分自身のイメージを大切にして欲しい─つまり、歌詞で歌われている通り『誰にも聞かなくてもキレイなものはキレイ』、貴方が感じた事をそのまま信じて欲しいということだったのではなかろうか。

そしてやや余談になるが、これ、『PINK BLOOD』全体をライブでパフォーマンスする時に、生身のヒカルはどこのパートを歌うつもりなのかがサッパリわからない。それくらいに声が重ねられている。新境地なのは間違いないが、コンサートのリハーサルは困難を極めるだろうなと思うよ。さぁ、GBH!(がんばれヒカル!)