無意識日記々

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横に逸れてく『せよ』

『Time』のコーラスワークは本当に細部まで凝っているな。前に『…あの頃より私たち魅力的魅力的』のパートは『私たち』を表現する為に左右にダブルで別れてユニゾンしている、なんて話もした事もあったと思うが他のパートもあれやこれやとあるもんなんだな。

『大好きな人にフラれて泣くあなたを

 慰められるonly oneである幸せよ』

ここの箇所、百合男子的に余りにもお馴染みなシチュエーションを描写してくれているものだから(異性愛者に恋した同性愛者がこういうポジションに収まりがちなのよね)、ヒカルがこれを歌ってくれてガッツポーズをする事に熱心になるあまり、さっきまでここのコーラスワークの妙技の数々に気がついていなかったよ。

まず、『大好きな人にフラれて泣くあなたを』の一節の所、右チャンネルで『泣くあなた』を表現しているらしきバックコーラスが入っているではないか。全然気がついていなかった。何て歌っているのかはわからないが(そもそも歌詞があるかどうかもわからないが)、なんとなく泣いているような響きではある。

続いて、『慰められるonly oneである幸せよ』のところ、only oneあたりで今度は中央に何やらバックコーラスが入っている。さっきの右チャンネルのコーラス以上に何を歌っているのかわからないのだが、あたしにはなんとなく「慰める」声に聞こえた。「よしよし」みたいな風にいたわってくれているのだろうか。わからないけど。こういう遊び心があるとだとしたら面白い。

そしてこのパートの最後、『である幸せよ』のところ、メインヴォーカルがそのまま中央から右チャンネルに向けてパンしてフェイドアウトするのな。いやぁ、これが結構効果的でね。

これ、全くの妄想でしかないが、大好きな人にフラれて悲しんでいる(『私』が)好きな相手(=『あなた』)の様子をみて幸せを感じているという「歪んだ状態」を表現しようとしてるんじゃあないだろうか。『幸せよ』という歌詞を物理的に横に捻る事で、それが歪んだ愛情のようになっている事を表しているような。勿論、このあとこの二人は“あの頃より魅力的”な関係になる訳で、失恋の痛手を慰める行為も純粋な愛情からくるものだとは思うが、これが相手の失恋を待ち侘びるようになってきたらヤバかった、という事だったのではないだろうか。

或いは、「そうなる未来を脇に追いやる」為にここのメインのヴォーカルを右側にフェイドアウトさせていった─実現しなかった世界線として処理した、という解釈もアリかもしれないな。

いやはや、こんな妄想まではたらいてしまうほど、『Time』のコーラスワークは凝りに凝りまくっている。皆さんも是非ヘッドフォンやイヤフォンを使って、出来ればハイレゾ音源で沢山のヒカルの歌声の重なりと飛び散りをチェックしてみてくださいなっと。