無意識日記々

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フィードバック・ルーチン

感染症禍下でまたひとつ問題になるのが「フィードバックのリズム」である。なんだかんだでヒカルは新曲を出す度にリスナーの反応を結構チェックしていて、それを以後の曲作りに活かすのだが、今回『One Last Kiss』が発売延期になった事で、本来得られるはずだったフィードバックがまだ来ていない。90秒や15秒で感想を書いてる人も居るには居るけれどね。

しかし一方で、創作活動、制作ペースは止まらない。作り始めてしまったら、全ては動き出してしまうのだ。ヒカルの作詞が「24時間営業」なのは本人も言っている通り。寝ても覚めてもという事は、脳のバックグラウンドでも作詞が続行されているということ。無意識下で進行するその作業を制止するのは難しい。時間とともに創作は勝手に進んでいく。

ある程度はフィードバックを期待していたと思うのだ。『One Last Kiss』へのリアクションを次の曲作りやアルバム全体のバランス構築へと還元していくプロセス。その「アテが外れた」感覚の中今ヒカルは次の、次の次の曲に携わっているのではないか。

ある程度延期は予想してはいたかもしれない。一方で、ではいつが発売日になるかは見当もつかない。こうなってくると、ちょっと手探りが長過ぎる。

ただ、そういう制作はUtadaの2枚で慣れているというのはある。Utadaの2枚は他の宇多田ヒカル名義のアルバムと違い、シングルを5枚くらい発売しながら作り上げていったのではなく、アルバム収録曲を何のフィードバックもない状態から全曲揃えた後にそこからシングルをリリースしていくという手順をとった。特に『EXODUS』は八割くらいの楽曲をたった4人で作業して作り上げていった作品だ。その間、ヒカルが浴びたリアクションは無い。いや、正確には『ヒカルの5』や『Single Collection Vol.1』や『誰かの願いが叶うころ』などがあるにはあったのだが、それがUtadaの作品への影響になったかといえば微妙なところだ。モチベーションの面では大きかったかもしれないけどね。日本語曲への日本人のリアクションが『EXODUS』の作風を左右したかというとね。

これにいちばん近い宇多田ヒカル名義のアルバムは『First Love』と『Fantome』になるかな。でも『Fitst Love』も『Automatic / time will tell』をリリースしてから6週間くらいは制作していたようだし、『Fantome』も『花束を君に』『真夏の通り雨』をリリースしてから5ヶ月以上してからの発表だった。やはりUtadaほどではないか。

なので、全く経験が無いわけではないけれど、ヒカルも今ちょっと奇妙な感覚の中にいるのかもしれない。『One Last Kiss』が解禁になった暁にはいつにもましてリアクションしまくってあげるのがヒカルの為になると思うので手ぐすね引いて待ち構えておくことと致しましょう。