最近こどもたちの間ではAdoの「うっせいわ」という歌が流行っていたようですね。よくできた曲で、なんかこういう懐かしい芸風(ニコニコ黎明期みたいなやつ)が若い子にウケてるのねぇと老人は思っているのでありました。
歌詞もメロディもまさに厨二病真っ只中という感じで若さっていいなぁと思っているとこだけど、こちらの世代はシンエヴァで「厨二病を卒業しろ」と庵野総監督に(25年経っても相変わらず)諭されてたりしててあんま変わんないのかも。あははのは。
そんなシンエヴァの主題歌『One Last Kiss』では宇多田ヒカルが『なんてことなかったわ』とか『そんなものはいらないわ』とか歌っていて。「うっせいわ」との共通点と相違点が面白いなと思う。多分、25年前のテレビシリーズのエヴァもこの「うっせいわ」みたいなノリで“大人たち”に見られてたんだろうな。
『初めてのルーブルはなんてことはなかったわ』は本当に絶妙なバランスで出来ている。ここだけだと平静を装って(昨今は冷静を装うとか平然を装うとか色々バリエーションが増えてますね)「あたしはもうこどもじゃないからそんなことではしゃいだりしないのよ」「ルーブルなんてブランドに負けて何も感じてないのに絶賛したりなんてしないわ」と無理に大人ぶって嘯いてると解釈する事も可能だけれど次の『私だけのモナ・リザもうとっくに出会ってたから』とおう理由説明が結構ぶっとんでてここでかなりの説得力が出る。とはいえ、それでもここまでだけだとただ盲目的に惚気けてるとも解釈されなくもないのだが、この後歌全編を通してその人が『忘れられない人』として追憶の向こうにしか視えていないことがわかってきてその切なさに惚気説も自然消滅させられる。ポップにみえてここの歌詞は相当ガードというかディフェンス力が高いのだ。
シンエヴァのテーマとシンクロしているのだから「厨二病からの卒業」というテーゼは当然視野に入る訳で、その物語の構造がそのまま『One Last Kiss』の歌詞構成に転化しているのは偶然ではないだろう。後半のリミックスパートで何度も『忘れられない人』『I Love you more than you'll ever know』と繰り返されるのは、旧劇版からのリビルドとして作られた新劇版の締め括りとしてシンジがひとりひとりに対して「大人の対応」を繰り返していく場面と呼応する。だからこそ『One Last Kiss』の最終局、
『吹いていった風の後を
追いかけた眩しい午後』
は、庵野秀明と宇多田ヒカルがお互いに申し合わせていなくても、映画のラストシーンをほぼそのまま描いたものになり得た。(風ってのはシンジの手を引いた人の事ですかね)。物語が同型だから締め括り方も自然と同じになったのだ。単独で聴いても素晴らしいが、映画館で観た時は本当にこの互いのラストシーンの共鳴に感動した。だからすんなり終劇が受け容れられたともいえる。そうしてエヴァは普遍になったのだった。