で『PINK BLOOD』のサウンドだがこれがまぁ案の定というかいつも通りというか一筋縄ではいかなくてな。どうにも解析していかないと全容が把握出来ない。
特に、タイトル・フレーズである『PINK BLOOD〜♪』の扱いが今迄に無さ過ぎる。全部がアドリブというか非・定型で、導入部からTVサイズ90秒間ずっとバックで歌われ続ける。後ろを漂っているような揺蕩っているような。まるで幽霊というか霊魂というか妖精や精霊のようなそんな位置付けなのだろうか。これ最終的には「観察者視点」として解釈されるんじゃないのかと妄想が膨らむんだけど今のところ既刊の範囲でその兆候はない。(だからこれはネタバレではないっ……ハズ)
今迄のヒカルの楽曲だとタイトルというのはサビに使われる事が多かった。『Prisoner Of Love』のように曲のド頭からというのもあれば、『Flavor Of Life』のようにサビの最後を〆るケースもあり。また、『First Love』のように歌詞の中に一切出てこないケースもあるし『COLORS』のように直接音節としては出てこないけど歌詞全体で単語を共通するテーマとしてタイトルが提示されていることもあった。
『PINK BLOOD』は冒頭から(かどうかはフルで聴いてみれるまでは本当かわからないけど)歌われてはいるものの、そのような「非定型のバックコーラス」として終始扱われているのが新鮮だ。リミックスなら兎も角、オリジナルでこんな扱いのタイトルって何かあったかな。俄には思いつかん。
これが楽曲に独特の雰囲気を醸し出している。空気感という意味ではAメロアタマから入るジャズエレピ風シンセの入れ方が『Passion』っぽくって萌えなのだが、ギターの控えめな使い方なんかは『誰にも言わない』を彷彿とさせたりも。そういった新旧何れも連想させる音作りの中で『PINK BLOOD〜♪』の非定型的バックコーラスは今までにない浮遊感を作り出す。強いて言えば、確かにこれは幽幻系ダンスインストの傑作『Gentle Beast Interlude』を作曲した人の手腕だなと感じられるというか。『忘却』のオリジナル(プロトタイプ?)たるインスト・ヴァージョンも、もしかしたらこういう空気感だったのかもしれない。
楽曲終盤のフェイクタイムにこういうのを入れてくるならまだわかるが、楽曲の一部始終に後ろで鳴り響いているとなると、『ぼくはくま』や『パクチーの唄』のようなリフレイン中毒曲としても捉えれるかもしれないね。フルコーラスが解禁された暁には「宇多田ヒカル史上最もリフレイン回数の多い曲」になってたりするんかな。うむ、まだわからないけどこの『PINK BLOOD』に関してはいつも以上にCDシングルでリリースして貰いメインヴォーカルのみを抜いたカラオケバージョンを聴かせて欲しいなと思うところでありますよっと。