無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

またも効果を発揮した「何にも言わない」パート

『誰にも言わない』の曲構成については以下の日記で触れている。

【ABBCABBBCCDDEE】

https://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary/e/96e8f319b132451fee65aa87afde34fc

【『(何にも言わない)』】

https://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary/e/13ff668a4039de383940c61752e82a04

goo blogの投稿仕様上ハイパーリンクがめんどくさいのでひたすら本文をコピペしよう。

+++++ +++++

実際に曲構成を眺めてみてもこの楽曲(※『誰にも言わない』)は、演奏時間が5分足らずであるにも関わらず非常に多彩なパートで彩られている。

非常に短絡的に曲構成を書き下すなら、

ABBCABBBCCDDEE

になるだろうか。アルファベットはそれぞれ、

A:いくつもの〜/完璧な〜

B:一人で〜/過去から〜/罪を〜

C:I won't tell my friends 〜

D:Can you satisfy me ? 〜

E:One way srteet 照らす〜

に対応している。流石にここまで別個のメロディーを一個の楽曲に用意した事はなかったかもしれない。

+++++ +++++

+++++ +++++

『誰にも言わない』の構成で絶妙だと思ったのは

『明日から逃げるより

 今に囚われたい

 まわり道には

 色気がないじゃん』

のパートだ。ここ、メロディ自体は『一人で生きるより〜』『罪を覚えるより〜』の箇所とほぼ同じなのだが、「尺は同じなのに歌詞の量が半分」なのだ。

どういうことかというと、一番のBパートの歌詞が

『一人で生きるより

 永久に傷つきたい

 そう思えなきゃ楽しくないじゃん

 過去から学ぶより

 君に近づきたい

 今夜のことは誰にも言わない』

であるのに対して、

『明日から逃げるより

 (何にも言わない)

 今に囚われたい

 (何にも言わない)

 まわり道には

 (何にも言わない)

 色気がないじゃん』

という構成になっているのだ。「(何も言わない)」箇所は、文字通り何も言わない・歌わない。ただの全休符小節である。

ここが何故絶妙なのかというと、一番二番の『一人で生きるより〜』のパートがそれぞれその直前の『いくつもの出会いと別れ〜』『完璧なフリは〜』のパートを“受けて”立ち上がるメロディ&歌詞であるのに対して、『明日から逃げるより〜』のパートは、ここから始まる起点となるメロディ&歌詞として機能しているからだ。同じBパートでありながら、役割が異なる。その差異を、この「(何にも言わない)」パートが表現しているのである。

更に踏み込んで言えば、『誰にも言わない』は、ABCでまずひとまとまりの歌、さらに次にBCDでまた別の構成のひとまとまりの歌が重なって組み合わされた楽曲であるとも捉えられるのだ。同じBパートが違う役割で機能しているとは、そういう事でもある。

+++++ +++++

珍しく(?)無駄のないエントリーだったのでほぼまるのまんまコピペになったな。

この、『誰にも言わない』で語った曲構成の妙が『BADモード』でも応用されている。具体的には、

『今よりも良い状況を

 想像できない日も私がいるよ

 I can't let you go

 I just want you more

 When you feel low and alone

 You'd better let me know』

のパートである。ここ、実際は

『今よりも』ツッツッダンダンッ

『良い状況を』ツッツッダンダンッ

『想像できない日も』ツッツッダンダンッ

『私がいるよ』ツッツッダンダンッ

という風に、間を空けて歌ってるのよね。これは、上記コピペした『誰にも言わない』の『(何にも言わない)』パートと同じ手法である。全休符小節を挟むことで、さっきまでサビとして機能していたメロディを今度はAメロ/ヴァース扱いにするという点でね。

なので、上記コピペで

「『誰にも言わない』は、ABCでまずひとまとまりの歌、さらに次にBCDでまた別の構成のひとまとまりの歌が重なって組み合わされた楽曲である」

と書いたのになぞらえるならば、

『BADモード』は、ABCでまずひとまとまりの歌、更に次にCDEFでまた別の構成の歌が重なって組み合わされた楽曲である。

という風になるか。勿論焼き直しだなんて安直なものではなく、『BADモード』においては真ん中に置かれたXパート、即ちアンビエントモードな間奏パートが物凄い存在感を放っているからこの曲構成は『BADモード』独自のもの以外の何ものでもない。ただ、『誰にも言わない』で結実した手法にヒントを得たのは間違いないところだろう。とは言っても、ヒカルが自分で出したヒントなんだから徹頭徹尾宇多田ヒカルのオリジナルのアイデアたちなんだけどね!