無意識日記々

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『今は恋愛よりカウンセリング』

そしてまた「作詞者本人ならではの大胆な意訳」に戻ろう。元歌詞では

『For now committed to my therapy』

の部分。ここをヒカルは

『今は恋愛よりカウンセリング』

と訳した。殆ど原形留めてない!

どこから『恋愛より』が出て来た? いや確かにそこまでの文脈でそう解釈するのは不自然ではないのだけれど、それにしても思い切って限定してきましたねぇ。原文を直訳すれば

「今のところ(私は)私の治療に取り組んでいます」

そう、本来"therapy"≒「治療」なのだ。内科か外科か、心療内科か精神科かはわからないが、"committed to one"s therapy"って書かれたら「病気か怪我か、何か、治療に従事中なんだろうな」と思わせる。しかしヒカルはここをキッパリ「カウンセリング」にしてきやがった。

インスタライブでも見せた今のヒカルのカウンセリングに対する態度は凡そ「治療」からは程遠い。なんか友達とお茶しに行きますみたいなテンションだったよね。

イギリスのことはわからないが、日本風にいえば、「治療」は大抵健康保険がききそうで、一方カウンセリングは必ずしもそうではない。何かを治す行為というよりは単なる対話に近い。カウンセラーの日本語訳も「相談員」だしね。

そういう"therapy"をあっさり「カウンセリング」と少し意味をずらして(時によりカウンセリングも治療たりえる)限定してきたのは、ここの一節が「宇多田ヒカル本人のこと」だとヒカル自ら強調する為ではないか。だとすると『恋愛より』を差し挟んできた理由も見えてくる。「VOGUE JAPAN」のインタビューでヒカルはこんな風に語っていた。

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スー プライベートの変化に伴う気づきは、ほかにありましたか?

宇多田 こんなに長期間恋人がいなかったのは初めてなんですね。初めてちゃんと自分と向き合いました。それまでは、誰かの気持ちを必死に考え続けることが、自分の気持ちを考えないでいる理由になっていたんです。そこで初めて自分との関係を持った気がして。シングルの長い期間が、一番手応えがあった理由かなって思います。

スー どのくらいの期間ですか?

宇多田 何年だろう、少なくともここ4年間のほとんど、恋人はいないです。

https://www.vogue.co.jp/celebrity/article/in-my-mode

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また、こんな受け答えもあったね。

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スー 宇多田さんが認識する、一番の理解者は誰になりますか?

宇多田 そんなこと言っちゃうと、どうしても精神分析医がパッと浮かんじゃう(笑)。

https://www.vogue.co.jp/celebrity/article/in-my-mode

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つまり、

『今は恋愛よりカウンセリング』

というヒカルの対訳は、

「私宇多田ヒカルは現在数年間恋人はいなくて、今は精神分析医とカウンセリングしてる方がいい」

という極々個人的な事情を反映していると解釈するしかない。作品の対訳でここまでパーソナルでいられるのは本人ならでは以外の何物でもないだろう。

これは、『気分じゃないの(Not In The Mood)』を書いた経験が生きてるのではと私は思う。今の自分のありのままをそのまま事実に基づいて書く、っていうね。にしても、ホント、大胆な事するねぇヒカルパイセンは…。