無意識日記々

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初恋の扱い

そうなのよね、ティーザーからして『First Love』が大フィーチャーされてるから当然この大スタンダードナンバーの方に注目が集まるのだけど、制作側の手腕が問われるのは勿論『初恋』の取り扱い方の方でね。

そもそもドラマの「First Love 初恋」というタイトルが大胆過ぎる。これ曲名ベースだと言われなければ「なんで同じ意味の言葉を英語と日本語で!?」と思われても仕方ない。「スパイダーマン 蜘蛛男」みたいなもんじゃねーの? まぁあんまり使われない英単語なら効果的かもしれないけど、FirstもLoveも、昭和の人間ですら中学一年生で習う単語だからねぇ。

なのでこのタイトルに説得力を与えるためにも『初恋』をどうフィーチャーするかがドラマのポイントのひとつとなるだろう。

そこらへんを探るのにドラマの方から切り込む知識は当方持ち合わせていないので取り敢えずこちらの都合で見立ててみよう。再びトラックリストを並べてみる。

ディスク 1

Side A

01. First Love (2022 Mix)

Side B

02. First Love (A Cappella Mix)

ディスク 2

Side A

01. 初恋 (2022 Remastering)

Side B

02. 初恋 (A Cappella Mix)

https://twitter.com/fu9ma/status/1573208134520541184

目を引くのは当然『First Love』『初恋』ともに収録されているB面の(カップリングと言わなくていいのだ!)『A Cappella Mix』、アカペラ・ミックスだろう。いつもの(というのは昨今抵抗あるけれど)シングル盤ならインストゥルメンタルと称してカラオケ、即ちオリジナル・トラックからメインヴォーカルのみを削った音源が入っていたものだが、今回はその逆、メインヴォーカルのみを残して他の楽器などの音を削った音源を収録する事になっている。

ここで大事なのは「メインヴォーカル」がどこまでを指すのか、だ。『First Love』アルバムのTV Mix盤を聴けばわかるとおり、カラオケバージョンてのは歌声が全く全部削られるわけではなく、バックコーラスはそのまま残されてる事が多い。オクターブ上下のバックコーラスだともう殆どメインヴォーカルと変わらなかったりして「カラオケとは」と概念批判思考の領域に入り込んだりもする。

『初恋』はそのバックコーラスの分厚さが天下一品である。それを活かすために天下のクリス・デイヴによるドラム・トラックを総て削るという暴挙に出た程だ。ギャラを払うレーベルからしたら涙目案件まっしぐらなのだが、実際に聴いてみて何が楽曲を活かすか妥協せずに見極めた宇多田ヒカルプロデューサーの大英断だった。その判断の成果、成否は実際のトラックを聴いて貰えば瞭然だろう。

アカペラ・ミックスでは、そのバックコーラスのどこまでがフィーチャーされるかがポイントとなる。メインヴォーカルに焦点を当てたシンプルなトラックになっているのか、それともドラム・トラックが不要いやさ邪魔になるほどの分厚い分厚いバックコーラスをそのまま残すのか。『I need you』のパートは流石に残さないと格好がつかないと事前には思うが、思わぬミックスの方法もあるか・・もしれないからここらへんは予断を許しませんね。

そして、このアカペラ・ミックスの方向性如何によって、楽曲『初恋』がドラマ「First Love 初恋」の劇中歌として起用されるかどうか、起用されるとしたらどんな場面で流されるかが決まっていく訳だ。メインヴォーカルのみであれば静かなしっとりとした場面で、バックコーラスをそのまま残したトラックであるならば荘厳で感動的な場面で、それぞれ使用されることになるだろう。或いは逆に、こういう場面で使いたいからアカペラ・ミックスを用意して欲しいとドラマ制作側から依頼された可能性もあるかもね。いずれにせよ7インチアナログ盤最大の関心事のひとつといっていいだろうこのアカペラ・ミックスは、宇多田ヒカルのアナログ盤の評判はもとより、ドラマの方の評判をも左右するかもしれないのだ。心して接してみたいものである…って聴けるまでまだ10週間以上あるんだけどね!