無意識日記々

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インタールード小咄

インタールードでアルバム同士がゆるく繋がり合ってるんじゃないかって話。

まず1stアルバム『First Love』に収録されている初代インタールード、その名もズバリ『Interlude』は一風変わった楽曲だ。これ以降のインタールード曲は基本インスト(歌無し)だが、こちらは短いコーラスとヒカルの留守電メッセージで構成されたまさに「曲間小曲」という感じ。これが元になって次作2ndアルバムの『言葉にならない気持ち』が生まれるのは皆さん御存知の通り。この2曲で1stアルバムと2ndアルバムは繋がっている。そして2ndアルバムと3rdアルバム『DEEP RIVER』は『DISTANCE』と『FINAL DISTANCE』で繋がっている…まぁここまではファンなら既知の話。

その3rdアルバムにはインスト曲の『Bridge (Interlude)』が『光』の前に差し挟まれている。「インタールード」は「曲と曲の間を繋ぐ小曲」を意味するのだが、それに合わせて「曲と曲を“橋渡し”する」という意味で「ブリッジ(橋)」という名前がつけられたのだと推察される。

昔推理した通りこのタイトルにはもうひとつの意味がありそうで。ヒカルはこの3rdアルバム『DEEP RIVER』を「詩集」だと表現した。ならばこの作品は「言葉の流れ」が大河の如く次々と流れてい(きやがて海に辿り着)くイメージで制作されていると思われる。ならばそこでの「橋(ブリッジ)」とは、河の流れから離れるために掛けられるものであって、それは、「言葉の流れがない場所」という意味でインスト曲、歌の無い曲のタイトルになったのではないかなとね。

この推理に擬えれば、次の4thアルバム『ULTRA BLUE』のインスト曲のタイトルが『Eclipse - Interlude』であることの意味も見えてくる。エクリプスとは蝕、日蝕や月蝕のことだ。ヒカルは3rdアルバムが「詩集」であれば、4thアルバムは「画集」だと言った。中心に『COLORS』(色彩)を添え、アルバム制作終盤に出来上がったと思しき『海路』で『額縁を選ぶのは他人』とも歌っていることから、『DEEP RIVER』では河の流れが言葉の流れだったのと対比して、大空や大海原に煌めく「光と色」がこのアルバムでのヒカルの歌声の比喩なのだと思われる。ヒカルが光ってそのまんまなのだが、そこで「蝕(エクリプス)」は、大空から光を失わせる自然現象のことなのだから、言葉の流れが無い場所が橋(ブリッジ)だったのとの対比で、ヒカルの歌声が失われた時間を蝕(エクリプス)とするのはよくわかるだろう。ここまでは過去の無意識日記でしてきた話。

で。5thアルバム『HEART STATION』でのインタールードのタイトルは『Gentle Beast Interlude』だ。ジェントル・ビーストってなんじゃらほいといえば、この曲から続けて演奏されるヒカル随一のダンス・ナンバー『Celebrate』の歌詞の中に出てくる

『優しい瞳を持つ化け物が目を覚ます』

の一節からとられたものだというのは長年のファンなら御存知かと思われる。ジェントルは優しいとか上品、ビーストは獣とか悪魔とかいう意味だからね。

ではこのタイトルはどう過去のアルバムと繋がっているのか、対比や関連があるのかというとだ。『UH3+』収録の『Deep River』には前奏前にヒカルによる詩の朗読があって、その詩が

『空が目を閉じる』

の一節で終わる事を想起しよう。この謎めいた一節の解釈はひとそれぞれかと思うが、最も即物的な解釈をすればこれは「蝕」を表しているのではないかと思い当たる。確かに、月や太陽が順番に欠けていく様は空がゆっくり目を閉じていく姿のようにも見えるからね。

となれば、4thアルバム収録の『Eclipse - Interlude -』は「空が目を閉じる」曲で、5thアルバム収録の『Gentle Beast Interlude』は「化け物が目を開ける」曲という風に対比になっていたのではないだろうか。

これだけだとこじつけかな?と思ったが、次の6thアルバムの1曲を聴いてこじつけとも言い切れないかなと思い直した。『忘却』だ。これはKOHHと共にヒカルが歌を入れた曲だからインスト曲とかじゃないじゃんと思われそうだが、ヒカルのコメントによれば元々インスト曲のつもりで作っていたのが(多分沖田さんに?)却下されて歌入りに作り替えたものだという話。その『忘却』のヒカルが歌うパートに

『熱い唇 冷たい手

 言葉なんか忘れさせて

 強いお酒にこわい夢

 目を閉じたまま踊らせて』

という段落がある。『言葉なんか忘れさせて』ってのはこの曲がインスト曲だったこと(の未練?)を匂わせているし、初代インタールードが『言葉にならない気持ち』に進化した事も思い出させる。そして『目を閉じたまま踊らせて』というのは、ダンスチューンである『Celebrate』のその『優しい瞳を持つ化け物が目を覚ます』の一節と対になっているように思われたのだ。

つまり、

『空が目を閉じる』(『Deep River』~『Eclipse - Interlude -』)

『優しい瞳を持つ化け物が目を覚ます』(『Gentle Beast Interlude』~『Celebrate』)

『目を閉じたまま踊らせて』(『忘却』)

という風にイメージがゆるく繋がり合ってるんじゃないかなと。そんなことを考えていたのでありました。でもまぁ、ヒカルが本当はどんなつもりでそれぞれの歌詞とタイトルを書いたのかは、そう易々と言葉にはしてくれそうにないでしょうねぇ…。