おおおぅ、《「不滅のあなたへ」前世編『PINK BLOOD』Special Movie》というのが公開されたぞ。
OP映像の時点でわかっていた事とはいえ、こうやってフルコーラスで観せられるといよいよアニメ業界の編集力と理解力の高さ、ノウハウの蓄積の濃密さを思い知らされるな。
ともすると音楽のミュージックビデオというものは、映像作家のアーティスティシティ/アーティストシップが全面に押し出されて音楽が蔑ろにされがちなのだが、この映像はそれとは全く違う。星空のように無分別に鏤められた音の数々を時間的に前後するシーンの細かいカット割りで表現するとか執念と技術の両方を感じるよ。他にも目と耳を引く手法が盛り沢山だ。
『PINK BLOOD』MVを手掛けてくれた谷川英司監督もヒカルの音楽へのリスペクトが深くて非常に感銘を受けたものだが、このスペシャル・ムービーもそれに優るとも劣らない。いや優劣を宣うのも野暮か。これはもう新しい正式な『PINK BLOOD』のアナザー・ミュージック・ビデオとして認めるべきなんじゃないの。
勿論、歌詞にもしっかり対応しつつ、アニメ自体の物語やキャラクターのファンも今までのストーリーを思い出しながら感慨に耽るのにうってつけな約3分半に仕上がっていて、いやまぁこの職人技というか複数の目的を一つの作品で達成する知恵と工夫の結晶振りはお美事という他ありませんですよ。
宇多田ヒカルのMV最高傑作は私にとって『One Last Kiss』MVだが、あれもアニメと実写両方を手掛ける庵野秀明&辻田恵美ご両人による編集作品だった。いやもう、今後ミュージックビデオってアニメ編集が出来る人に頼んだ方がいいんじゃないか? 自己主張の強いアーティストよりよっぽど楽曲とヒカル本人の魅力を引き出す映像を創造してくれそうで。いや、自己主張の強いアーティストがダメって訳じゃないんだ。こちらとしては主役がヒカルと曲だからなんだ。それを尊重して仕事をしてくれる人の方が嬉しいっていう、それだけの話なのよ。でも、色々と危機感持った方がいい気がするなぁ…。