これだけ公式がライブレポート記事を沢山紹介したことあったかな?というくらいに9月1日千秋楽公演のライブレポが幾つも上梓されている。長年ヒカルのオフィシャル・インタビューアを務められた松浦さんから、あれもしかして貴方ヒカルのデビュー時まだ生まれてない?という若い方々まで、様々な視点で語られるレポートを読んでいくのは面白い。
その中のどれのどの部分ということではないのだけど、時折「昔の曲を歌うとその当時にタイムスリップする」的な記述に出会って、「嗚呼これは私には書けなかったなぁ」と痛感する事がままあった。私がそれを書けない理由は単純で、ヒカルの新しい曲も昔の曲も、普段から満遍なく聴いてる為特に懐かしくも何ともないからだ。日常で聴いてりゃそりゃ何の感慨も無い。
確かに、「これがライブで聴けるとは!」という驚きなら、ある。しかしノスタルジーは全くと言っていいほど、ない。『DISTANCE (m-flo remix)』にしても、シャッフル再生で普通に現れてくれるからね。たまに「今日はリミックス特集だ!」っつってリミックスばかり聴いたりもするし、他のオリジナル曲とかと遭遇率は特に変わらない。
なので、今回のSFツアーでは、いや、SFツアーでも、だな、特に昔を懐かしむ瞬間はなかった。冷静に思い直せばあの曲聴いてた頃はこんなんだったなーとか思い出せはするんだが。そういう意味では「ベストアルバムを記念するツアー」っぽい楽しみ方はしてなかったな。
逆に、『SCIENCE FICTION』らしい楽しみ方はたっぷり出来たともいえる。それは、何度も繰り返し書いてきた通り、「過去の素材を援用して“今”を表現する」のがアルバムのコンセプトだった(と私は思っている)から。どれだけ昔の曲を歌おうと、歌ってるのは今の宇多田ヒカルなのだから、それを真正面から享受できたのがとても嬉しい。なので、これ、普段から満遍なく過去音源を聴いている自分のような人間の方が、なんていうんですかね、スルッと素直に楽しめたのではないですかね。
それと似たフェーズに居たのが、若いファン、或いは新しいファンの皆さんだったのではないかな。つまり、昔の曲をリアルタイムで聴いておらず、特に自分の思い出と結びついていないから、気持ちが過去にタイムスリップする事がない人たちね。中には聴いたことのない曲、存在も知らなかったバージョンなどに今回巡り合ったかもしれないけれど、そうやって初めての出会いとして受け取れた方が、アルバムのコンセプトに沿った楽しみ方が出来たんじゃないかな。
かといって、「久しぶりに(昔の)宇多田ヒカルの曲を聴いたな」という人たちが楽しめなかったわけでは、ないですわよね? そこんところは、少し私と違うので、代弁するのは無理があるけど、特にアルバムのコンセプトがどうのと考えなくてもエンターテインニングなステージだったとは推し量れますわよ。
そうすると、楽しみ方の分布は、ボンッキュッボンッのワームホールスタイルで表現できそうで、なんかそれも楽しいわ。
まぁ結局、なんやかわやで万能なコンサートだったのかもね。
なおこれだけ千秋楽のライブレポが集中的に執筆公開されたのは、多分映像賞品のプロモーションも兼ねているからですわね。このライブレポの数々を読んで「そんなによかったのか。ではBlu-rayを予約してみよう」と思って貰えれば御の字。私も、微力ながら(謙遜にならないヤツだー)その点は意識して、プロモの後押しが出来れば嬉しいかもしれません。もちろん、今後も円盤が出て欲しいから今回もある程度売れて実績を積んで欲しい、という我欲が動機なんですけども。いつだって私は自分ファースト、ですわ。