無意識日記々

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アクセス・チャンネル

今週のBlurayで初めてWildLifeを観る層というのはどこにどれ位居るだろうか。現地、映画館、Ust、特設サイトにスカパー!、SSTVにDVDとよくもまぁこれだけアクセスチャンネルを揃えたものだ。ここまで網羅的だとネットに接続できるPCが手元になく、しかしBlurayは見られるというケースが上記に当てはまるのかな。このサイトは携帯で読んでくれているだろうか。勿論、DVDにもBlurayにも手が出ずおあずけという層が更にうんと居る。特に、被災地の皆さんはそれどころではないということもあるだろう。受験で一連の動き総て我慢、なんという人も多いのではないか。

世の中色んな人が居る。それに併せて展開され続けてきた"Wild Life Concert"の御披露目は、ひとまず今日明日前後で区切りとなる。ここまでやってくれたのだ。DVDは手元にあるが、記念にBlurayも手に入る予定である。(お前は当然だろう、という声が聞こえてきそうだが…)

今回は売上について触れていない。今述べた通りこれまでのアクセスチャンネルが多彩過ぎてひとつのメディアの数量を云々するのは困難だからだ。何度も触れてきたように、今の時代は商業音楽に対して"適切な指標"がなかなかみつからない。ひとつひとつの重みづけも考え始めると頭が痛くなるし、従って全体のバランスも見極めづらく、ここまで来ると「果たして私は何が知りたかったんだろう?」という気がしてくる。

とてもシンプルに「気にしない」という選択肢が頭に浮かぶ。EMIはちゃんと金額で集計して収益を上げている。そして、その点においてはそれで十分である。一方で、日和見な傍観者として、「他と比較した宇多田ヒカル」という社会的側面が"有り得る"事も又心得ておきたいというのがある。「2時間寝顔DVDが欲しい」なんていう奇天烈に社会性が皆無を軽く飛び越えて激烈にマイナスな志向の人間としては、ちょっとはバランスとっとかないとな、と思う訳だ。

しかし、ここまで情報が溶け合っていく空間の中で、なにか"ものさし"が本当に必要なのだろうか。一方で金額や動員数があり、他方に単に愛がある。それが世界というものだが、音楽は、その中で、誰に向かって奏でられるのか。歌は、誰に向かって唄われるのか。

ヒカルがそこに居て歌ってくれているうちは、何も考える必要はない。しかし、人生の大半は目の前でヒカルが歌っていない時間である。過去への追想と未来への希望を糧に生きるには、ちょっとばかし間がふらつく。ひとつひとつ埋めるというか、時間と付き合っていく必要がある。

具体的な対処法といっても、何も思いつかない。「何かしたい」と漠然と思っていても、それを詰める作業は想像以上に困難だ。ファンクラブという組織力がある場合、収益というエンジンはとてもわかりやすい。阿漕だ暴利だと言われるケースもあるかもしれないが、"常識的な感覚"をそこに持ち出していてはいつまで経っても何も動き出さない。傍からみたら呆れるような夢中と熱中と集中こそ人の元気なのだ。

愛だけでは生きていけないし、愛がなくても生きていける。Wild Lifeに愛が溢れていたのは、宇多田光という特定の個人に愛があるからだ。そのオリジナリティが、こういう孤独を運んでくる。

こういう? どういうことかと訝る一方、何故か確かに今その孤独感を感じる。元々そういうものだったのだ。光は、そこに差した光だ。私の名前の影の部分("_"←ここね)は、光が当たるから、在り得る。当たらなければ、孤独は想像の中に押し込まれ、現実と接点を持たない。

多かれ少なかれ、孤独を味わう機会、それを知る契機を、この文章を読む人は持っている。身寄りの有無や、友人の多寡とは直接関係のない、人として生きる上で感じる欠落。それを知る事が、"野生"からの離反であり、文明と文化の端緒となり得る筈なのだが…コンサートのタイトルは"WILD LIFE"なのだ。

表面的な理由は光の話している通りだ。マネージャー無しじゃ何も出来ないおばさんになりたくない、と。しかし、極端な言い方をすれば、"それだけのこと"で何万人も巻き込んでこんなことをするだろうか。宇多田光個人としての思いと、宇多田ヒカルという看板を抱えた"現象"としての社会的個人とを、同じ肉体が抱え込んでいる。それに耐え得る"からだづくり"の契機が、Wild Lifeなのだろうか。

いずれにせよこれでWild Life関連のリリースは一区切りだ。グッズ通販は終わり、特設サイトもメンテナンスと共に閉鎖されるだろう。あとやれることといえば、UTUBEのカウンター数を眺めること位だろうか。静かな脈のように、じわじわと歌の生命を伝えてくれそうだ。


まぁ、ゆっくりじっくり、2010年12月8日9日を振り返っていこうや。