無意識日記々

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外天楼

昨年TBS系列でアニメ化された漫画作品「それでも町は廻っている」の作者、石黒正数による短編集「外天楼」が頗る面白い。amazonのレビューでも目下18人全員が5つ星だ。是非一読をお薦めしたい。

…のだが、この作品、困った事にどう書評を書いても作品の魅力を損なってしまうのだ。(なので買って読む気があるのならAmazon等各書評は事前には一切目を通さない方がいい。一切、だ)。だからどこがどういいとかこちらから今書く事が出来ない。こういうBlogをやっているような人間泣かせな漫画である。なお全一巻で完結、\735です。

漫画作品の場合、大抵は一回読んで終わりなので、そういった未読者に対する気遣いは避けられないが、音楽の場合、ある程度は何回か味わい直す媒体なのであんまりそういう事は気にせずにレビューするものだ。

勿論、未聴者がレビューを事前に読みたくない意志は尊重するものの、基本的に音楽は聴いてみないとわからない、というか聴くという体験自体が重要で、文章による事前知識の有無に左右される事は少ない。

漫画の場合は、話の概要や喋り言葉など、字にして伝えられる事が多い。というか、小説に挿し絵が入り、挿し絵が増え、文章より挿し絵の割合が多くなり、果ては文章が吹き出しの中に押し込まれ絵が主体となったものが漫画だとすれば、小説と漫画は地続き(字続き?)であるともいえる。

音楽は、どこかで音を鳴らさないと始まらない。もし文章で何か魅力を侵すような事が出来るとすれば、それはレビューに歌詞を書いてしまう事か。その部分においては歌は小説、或いは文学とも繋がっているとはいえる。

という訳で、事前にレビューを読みたい、読んでもいい、という人に向けて毎度宇多田ヒカルUtaDAの新曲の感想をすぐさま書いてUPしてきてはいるのだが(まぁ近年はすぐに公式でサンプルが配信されるので全くの未聴でレビューを読むタイミングなんて半日もないのだけれどな)、それでもやはり、外天楼ほどではないとはいえ、レビューを事前に読む事で曲を聴いた時の感動を殺いでしまう事は有り得るし、そんな事はしたくない。ただ感動を共有したいだけなのだからね。

その為、こう見えても、なるべく最初の感想は大袈裟にならないように、とは思っているのだ。あんまりにも美辞麗句を並べ立て、「そんなに凄いのか」と事前に不自然に無意識にハードルをあげられるのは本意ではない。

しかし、何度か例外というか、どうしようもない時があって、その代表例がPrisoner Of Love EP だった。あれは、読んだ人に「どんな凄まじい事になっているんだ」とハードルを上げさせざるを得ない、非常に興奮状態のまま書かれてUPされたものなので、その点については後悔しているのだが、それ以上に、「このこと」を書き留めて世に曝しておきたいと強く思ってしまっていたのだ。義務感に近い感情だった。そしてしばしば、義務感や使命感に基づいて執り行われた行動は周囲に対し甚だ傍迷惑となる。果たしてあの時もそうだった。

しかし、とはいえ、これからも同じような事は起こると予め申し伝えておきたい。何か凄い作品に出会った時は、何かしらの強い感情に支配されて、抗い難い。宇多田光の作品のその強さが、私をいつもそう仕向けるのである。なんだ、責任転嫁か。すいません。