無意識日記々

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「逆に考えるんだ。」

桜流しの全体の構成を押さえておこう。これの説明に特徴的なのは、楽曲の頭から見ていくより、最後から見ていく方が理解がし易い点にある。逆に言えば、耳で冒頭から順に聴いていっても俄かには構成を把握しづらい。全く困った楽曲である。

アウトロを聴いてみよう。静かなる単和音の連打、これは前にみたように332の混合拍子で、冒頭の分散和音を起点とした一連のフレーズの名残である。もうひとつのフレーズは、楽曲の後半に登場し、グランドピアノからエレクトリックベース、そして最終的にフルストリングスへと受け渡された「もうひとつの主題」たるあのメロディーだ。

そこにチェロによる伴奏が加わって、アウトロは構成されている。即ち、ここを聴くだけで、ピアノによる2つのフレーズの流れがあり、それをストリングスが支えてきたこの曲全体のコンセプトが伝わってくる訳だ。ある意味、この楽曲の総括、まとめの部分である。

一方、この楽曲の最大のクライマックスはその直前、歌詞でいえば『開いたばかりの花が散るのを見ていた木立の遣る瀬無き哉どんなに怖くたって目を逸らさないよ全ての終わりに愛があるなら』のパートである。アウトロが簡潔な要約なら、こちらのパートはまさに"全部盛り"である。

前々回解説したように、ここの歌メロは冒頭からの前半部分でややラインを変えて歌われていたものだ。この楽曲に於いて「言いたい事」を最も託された大切なフレーズである。これを補助するフレーズとして語尾だけメロディーを合わせたシンセのサウンドがあり、そこに嘶くようにエレクトリックギターの鮮烈な音が絡みつく。それが右チャンネルの大体の様子。やや左側では、アウトロに登場した2つのピアノ起点のフレーズが、片方はずっとピアノのまま淡々と、片方はピアノからベースへと映りそれがドラムによって突き崩されてストリングスに継承されるという例の展開が待ち受けている。メインボーカル、バックコーラス、グランドピアノ、アップライトピアノ、エレクトリックベース、エレクトリックギター、シンセサイザー、そしてストリングス。『開いた〜あるなら』の間にこれだけのサウンドが犇めきあっているのである。複雑にも程がある。

この、複雑極まりない構成のクライマックスに如何に自然にもっていくかが楽曲展開力の見せどころだ。如何にあのシンプルなピアノから僅か4分でここまで持ってくるか。引き続き探っていきたい。