無意識日記々

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パソコンの音声事情

モノラルだステレオだというのは、イヤフォンやヘッドフォン、または一式揃ったオーディオコンポーネントを利用した時に意識にのぼるもので、例えば昔でいえばラジカセからのステレオ、なんてのはそんなにモノラルとステレオの違いはない。とはいっても更に昔はラジカセもモノスピーカーで、ステレオスピーカーが出てきたときには「随分迫力のある音が出るもんだ」と感心したのだけれど、実際のラジカセ世代はそういうのも体験していないんじゃないかな。

そして今、音を聴く機会といえばテレビを観るかパソコンで聴くかという所に落ち着いていそうだ。テレビはまさに映像モニター主体の商品だから仕方がないとしても、パソコンの方は別に出力は視覚でも聴覚でもよいものだ。本来なら。しかし現実には、ディスプレイの性能はこの30年でこれでもかて進化し色数や画素数は飛躍的に進歩したのに、スピーカーはといえば売り場の隅の方にあるオーディオに特化したスタイル以外はしょぼいものだ。これは日本のパソコンに限った事ではなさそうで、全世界的な傾向だろうか。インターネットが世界中を席巻する中、その音声再生装置であるスピーカーは全くと言っていいほど進歩していない。多くの人がYoutube等で音楽に触れている中でこれは相当痛い事のように思える。人は、事実として、画質にはこだわるが音質にはこだわらないのだ。

実際、パソコンから出ている音声がモノラルなのかステレオなのかなんて、殆どの人が気にしていないんじゃないか。ノートパソコンなら尚更である。タブレットも今のところその点を前面に押し出してはきていない。

こういう"聴覚軽視"の文化は、そりゃ勿論パソコンはまず画面で文章をタイピングする所から始まっているからそもそもスタート時点では音声出力装置が必要なかった、という事情もあるだろうけれどそれ以上にミュージシャン側がIT技術を軽視してきた事の表れなのかもしれない。iPod & iTunes (Music) Storeだって本来なら音楽業界から出てくるべきシステムだが実際に打ち出したのはパソコンメーカーであるアップルだった。何か、ずっとこの業界はITに対して躓き続けている気がする。

そういう風に考えると、桜流しをDVDで発売したのは、実は音質面でいい事だったのではないか。CDで発売しても多くの人々はリッピングしてそれっきり、となりそうだがDVDならテレビで観て貰える為パソコン周りよりオーディオ環境が整っているかもしれない。聴き手に対峙を要求する重い作品なだけに、パソコンのちゃちな音質をある程度避けられたのなら、楽曲の本来の姿にとってよい事だったのではないか。尤も、そのDVDも、パソコンで再生して観ている人の方が多いのかもしれないけれど…。