無意識日記々

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音色の変化の原因は

HEART STATION〜This Is The One〜Single Collection Vol.2〜桜流し、というこの5年、或いは、ぼくはくまから数えるならば7年のスパンでHikaruの音楽性について何か大まかな流れを見いだすとすれば、以前から指摘しているように「生楽器の増加」「打ち込み・シンセの減少」というポイントがある。

最新曲(ってもう一年前の歌だけど)の桜流しにもシンセはあるが完全に脇役であり、サウンドの主眼はピアノとドラム、そしてストリングスであり、この曲の作曲者の「作曲の為のメイン楽器」が「Macintosh」だというのは、些か驚きなのではないか。

嗚呼、挿話気味に触れておこう。エレクトリックギター&ベースギターという不思議な楽器がある。これらを生楽器と言うのは無理があるが、かと言ってシンセサイザーキーボードのような電子楽器と同類ともなかなか言えない。生楽器でも電子楽器でもない、電気楽器とも言うべき微妙な立ち位置のように思う。しかし、演奏者のフィーリングを即興的に即時性を以て表現する事に長けている、という点で「生(演奏向きの)楽器」であるという風に私は捉えているので、今回の文脈に於いては生楽器の仲間という意識でいると記しておく。

でだ。桜流しの前はSCv2d2の楽曲たち。こう書くと何だかスターウォーズに出てきそうだけども。嵐の女神はオーソドックスなフォーク&ロックな編成、Show Me Loveはバリバリのハードロック、Goodbye Happinessはタンスポップ、愛のアンセムはジャズ、Can't Wait 'Til Christmas(そろそろこの歌の季節となって参りました)はピアノ、と打ち込み&シンセ系の曲はGBHだけと言える状況になっていた。これが3年前の話。

疑問なのは、Hikaruがどうやって曲作りを行っているのかという点だ。ピアノ曲は大抵ピアノを弾きながら作る。頭の中で全部鳴らせていきなり楽譜を書き始める人も居るのだろうがそれは話が別として。Hikaruのプロデュースしたサウンド、即ちEXODUS〜ULTRA BLUEHEART STATIONにおいて、一部でエレクトロニカと呼ばれるほど打ち込み&シンセのサウンドが幅を利かせていたのは、単純にHikaruがパソコンで曲作りを始めていたからだろうと思われる。楽想というのは最初に出会った音色に大きく左右される。Hikaruがシンセの音で曲作りを始めたら最後までその音色で、となるのは自然な事だ。

何故、近年生楽器の起用が増えたのか。種々の理由が考えられるが、いちばんシンプルなのは、パソコンで扱える生楽器のサンプル音源の質が劇的に向上している事だ。Hikaruが昔、IvoryIIというピアノのサンプル音源集を手に入れた話をしていたのを覚えているだろうか。その容量たるや77GB。それだけの容量を費やして初めてパソコンで生楽器のサウンドが出せるのだ。つまり、そこまで来るのに時間が掛かっていたが、漸くHikaruの耳にも耐え得る音質が実現された。それをキッカケにして、昨今のHikaruも、サンプル音源の高音質の中で曲作りをするようになったのかもしれない。

まとめると。Hikaruの最近の楽曲に生楽器の起用が多いのは、パソコンでの曲作りをやめた訳でもなければ生楽器の演奏を習得してそれによって作曲しているのでもなく、今まで通りパソコンで作業してるんだけどまるで生楽器のようなサウンドが出せるようになったから実際のレコーディングでも生楽器を使うようになった、という見立てである。本人の作曲方法は基本的に変化していないのに技術と容量の進化のお蔭で出てくるサウンドに変化が起こっているとすれば、なかなかに興味深い話ではある。さて、実際の所はどうでしょうな。