無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

大事な事なので二度言いました。

もう一度、母娘の性格の話について纏めておく。要点はほぼ同じだからただの復習に過ぎないのだが。

母は19歳だかの頃にインタビューでこんな風に答えている。「私は自分からあれがしたいだとかこれがしたいだとかいうことはない。まわりからあれをしろこれをしろと言われたらそうするけれど」と。(何となく私の今の気分で標準語口調に変えておいた)

主体性が無い、といえばそうかもしれない。常に受け身なのかと。ヒカルも同様である。彼女はミュージシャンなんて未来の見えない職業に就く気はサラサラなかったのに、親に「ちょっと歌ってみてよ」と言われて歌ってみているうちにレコードが出来上がり、三宅さんに「日本語で歌ってみない?」と提案されて日本史上に残る歌手になった。リオ・コーエンに「ちょっと契約せえへんか?」と言われてUtadaの歴史は始まっている。この全体の流れ、上述のお母さんの台詞がピッタリと嵌る感じである。

彼女たちがただの受け身な人たちと大きく異なっていたのは「やるからにはいいものにする」という"本能"である。特に、歌手として、2人とも抜群に耳がよかった。諸悪の根源(?)はそれである。ヒカルはミュージシャンなんかになるつもりはなかったのに、耳が良すぎた為に、音楽の粗がどうしても聞こえてしまう。そこから目を逸らせない性格こそが2人の人生を決定づけたと言っていい。ヒカルの言葉を借りればそれは「正義感」である。よくないところはなおさずにいられない、もっとよくしようと思わずには居られない、目に入ったもの、耳が捉えたものに対して嘘が吐けないのだ。

「あれがしたい」「これがしたい」と言う人は、今あれもしていないしこれも出来ていない。頭の中にイメージがあって、それを現実の中で充足させようという意識がはたらいている。故に、物事に対してそのイメージに近付けようとする。

2人は、似ているようでちょっと違う。そこにまず現実があって、それを本能的な感覚に基づいて磨き上げていくのだ。事前のイメージがある訳ではない。しかし、例えば圭子さんは曲を渡されたら自分なりにこう歌うべきだ、こういう声が必要だ、という事を理解しただろう。それに基づいて歌っていったからあんなに歌が上手くなった。

2人が揃って「勉強が好き」と言うのも、ここらへんの性格に起因する。勉強が嫌いな人というのは、文字通り「机の前に縛り付けられるのを勉めて強いられる」事こそが嫌いなのだ。つまり、他にやりたい事があるのである。しかし、積極的にあれがやりたいこれがやりたいというのを言わない2人にとってはこれとこれをやりなさい、と言われてそれをするのは至って普通の事だし、いざ問題や宿題が出されたらよい回答や返答をしようと躍起になるからどうしたって成果は出るし誉められる。好循環が始まる。勉強好きになる訳である。

前に書いたように、この"カイゼン(改善)"の精神に終わりはない。始めた時にまず渡された曲だとかさとされたコンセプトだとかが先にあって、それを磨き上げていっているだけだから到達点がどこにもない。あれがしたいこれがしたいと言って始めた人は現実にあれやこれが出来たらそこで試合終了である。2人はそうはならなかった。周りの人間が、ここまで来てくれれば大丈夫だよとか、締め切りはここまでね、とか言ってくれれば、形になってやっと"残せる"のだ。

事前に到達点のイメージがない為、2人のカイゼンのプロセスには際限がない。その間に、あれがしたいこれがしたいと言って初めて終えた人たちを、能力やレベルの上で次から次へと抜き去っていく。これが出来たのも、2人とも耳がよかったからだが、それはいいとして、これが、2人がぶっちぎりのセールスを記録出来る程の高いレベルに到達できたカラクリである。なぜやる気のない人間が頂点に立てたか。それは、この、耳のよさと妥協を許さない正義感の発露にあるのだ。

妥協がない、というのは生きていて苦しい。ネガティブに言えばしゃんしゃん、中立的にいえばほどほど、ポジティブにいえば十分、というのが妥協だが、人は妥協した時に溜め息をつけるのだ。それまで緊張して、深呼吸するのを忘れてしまっているくらいだった。しかし、そこまで苦しくても"正義感"を引っ込める事はしなかった。生きづらかっただろうな、と勝手に想像する。

いろんな人を抜き去って孤高に来たはいいが、そこからが違う。最初からヴィジョンをもって頂点に立った人は、その業界自体を牽引しようとするし、代表になろうとする。横綱白鵬なんかがいい例で、彼は常に相撲界全体の中で自分がどう振る舞えば大相撲が盛り上がるかを考えながら発言・行動している。実際、今の角界を引っ張っているのは彼であり断じて理事長ではない。何の話だよそれ(笑)。

まぁいいや、この話の続きはするんだかしないんだか自分でもわからない。長くなり過ぎたから今夜はここらへんで。