無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

敬虔チアガール。(←急に思いついた)

宇多田ヒカルという人の、音楽家としての最大の欠点は、自分の声と合っていない曲まで書けてしまう事である。要は、才能が有り過ぎる。それが最大の欠点なのだ。

勿論、彼女は自分の声がどんなものなのか熟知しているし、その声を最大限に活かす曲を書く事も出来る。例えばThis Is The Oneは、シンガーUtada Hikaruとして最も得意なタイプのメロディーを持つ曲を(特にA面に集中させて)ずらりと揃えた。如何に彼女の歌が魅力的か、彼女の声はどういう時に最大限の威力を発揮するか、このアルバムが如実に物語っている。シンガーUtadaの魅力をいちばん堪能出来るのは同作だ。

一方、曲作りの才能が爆発し過ぎて自分にはあまり合わない曲まで書いてしまったのがULTRA BLUEHEART STATIONだろう。それまでの3枚と比較して明らかにカラフルになった曲調の多彩さは本当にこれ1人で全部書いたのかと疑われるレベル。バンドの4人5人で曲作りしてもここまでにはならないぞという位、似た曲調の曲がない。「っぽい」のがまるでみつからないのだ。強いていえばFlavor Of Life - Ballad Version -はFirst Love的かもしれないが、Original Versionを聴けばそうではない事がすぐにわかるだろう。


なので私は、宇多うたアルバムには同2作からの選曲を期待したい。歌唱力そのものでHikaruを上回る人は居ないにしても、シンガーUtada Hikaruよりその曲との"相性がいい"人は、居るかもしれない。それが見いだされれば大収穫だ。

例えば、最初のラインナップ妄想第一弾でユミちんにLettersでなくFight The Bluesを歌わせたのは、Lettersだと勿論林檎嬢の声も合うけれどもやっぱりヒカルでバッチリなのではと思いそう、だったら、もしかしたらFight The Bluesなら椎名様の声の方が寧ろヒカルより"相性がいい"のではないか、と思ったからだった。巧拙や上手下手より方向性の問題である。

となると、最も期待したいのはPassionなのだが、今回のメンバーはPassion選びそうなヤツ見当たらないんだよねぇ…私がよく知らない人も結構居るので、その中から現れてくれればよいのだが。

しかし、Hikaruの声との相性がとPassionについて言ったとしても、after the battleやSanctuary - Ending Version -を聴いてしまうと、相性云々を吹っ飛ばしてしまう歌唱力もあるものなのだなぁと妙に感心してしまう。なんなんだあれ。

逆に、ヒカルの声が全開で活かされる曲に敢えて挑戦するヤツが居てもいい。Prisoner Of Loveとかな。そのヒカル本人ですら、生で歌う時はキーを下げているのにメロディーラインを捉え切れないという鬼のように難易度の高い曲。これをワンテイクで歌えた人が居るのならそれだけで宇多うたアルバム2枚買ってしまいそうなくらい価値のある事だ。

ただ、今回は、アルバムのコンセプト的に、各自のソングライターとしての創造性に焦点の当たった内容になっていそうなので、歌唱の巧拙や相性というのは余り関心のある問題とはなり得ないかもしれない。そこらへんは聴き手の意識次第だともいえるのだけれど。

ソングライターとしてのヒカル、アレンジャーとしてのヒカル、シンガーとしてのヒカル、それぞれを他のソングライターたちがどう意識して楽曲と対峙したか。そこが今作のポイントとなるだろう。AIなんかは、イメージとしてはシンガーHikaruに興味がありそうだし、井上陽水は作詞家宇多田ヒカルに用があるだろう。tofubeatsの中の人はアレンジャーヒカルかな。そんな風に、1人々々が宇多田ヒカルという人のペルソナのどこを切り取っているか。そこに注意してアルバムを聴けば、その魅力は大幅に増量するに違いない。今から聴くのが楽しみである。