無意識日記々

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温かみと美しさ

最初次の連続テレビ小説のタイトルは「とと姉ちゃん」だよ、と聞いた時は、「そうか! ならオープニングテーマはスティーヴ・ルカサーがギター弾きまくるヤツで決まりだな!」と思ったもんだが、実際は当然そんな事はなく、ご覧の通りヒカルに決まった。

スポニチの記事によると、主演女優さん(という書き方をする理由はただひとつ、まだ彼女の名前を辞書登録していないからっ)の「曲聴きました」発言は本当にフライングだったらしく。耳にしたのはまだ完成品でも何でもなかったようだ。ふむ。

ただ、私は勝手に「温かみ」がキーワードになってるんじゃないかと思っている。理由は極々単純で、制作PとA&Rのお二人が「温」の字を使って今回発言していたからだ。本当にそれだけ。でも新米お母さんらしいじゃない、温かみ。HeatだかHotだか…なるほど、warmthにmildnessか。genialというのもある。明るく愛想がいい、温和なという意味だ。曲のイメージも、なんとなくここらへんが落としどころな気がする。

昭和の頃の朝ドラのオープニング・テーマはインストで、たまに「朝から何でこんなに重いねん!」と言いたくなるシリアスな曲調もあった。平成になって以降、メジャー・キー/マイナー・キー問わず「前向き」というのが重要視されている気がする。朝起きた直後に聴く音楽が後ろ向きだと確かによくないかもしれない。

まぁそれぞれである。勿論ドラマの内容によるからだ。しかも、CMなしでいきなり本編に入る段取りの為、劇中の展開が悲喜交々交錯していてもすっと馴染んでいかなくてはならない。ここらへん、すぐ切り込んでくるBGMとナレーションとの相性も大事だ。そういやナレーターもう決まってる筈だよね。あとでチェックしておこう。

朝ドラなんて見た事なさそうなヒカルがどこまでレクチャーを受けているか。先の記事によると制作Pさんはまだヒカルに会っていないらしいがメールやチャットやなんやかんやでコンタクトを取れていれば十分だ。

作風としては、かの「暮らしの手帖」の創刊話らしいので、前向きと言っても時代背景的に明るく軽やかに、とはならなさそうだ。そんな時にほっと一息つける温かい紅茶のような一曲、というのが理想的なんじゃないか。嬉しい事があった時に「よかったねぇ」、悲しい事があった時に「つらかったねぇ」と言ってくれるような。なんか注文多いけど。

またまた個人的な事を言わせて貰えれば、作品として朝ドラでいちばん好きなのは「ちゅらさん」だが、いちばん好きなオープニング・テーマはといえば「あすか」(竹内結子主演の菓子職人話な)の“風笛”だ。勿論Kiroroの曲もいいんだけどね。”風笛“の宮本文昭オーボエの音色がこれでもかという位に美しく、いやはや朝からええもん聴いた得した気分になれた。オープニングがロング・バージョンになる(即ちドラマ本編が短くなると)「いや今日はスペシャル感満載やわ」と言いたくなった。宮本文昭自体には1mmの思い入れもないけれど、彼の演奏は素晴らしい。

思うに、つまり、朝ドラのオープニングで大事なのは最終的には相性とか曲調とかではなく「美しさ」なんだろうと思う。ドラマは色んな展開をみせる。視聴者は多種多様だ。誰かに好かれる曲にしようとすれば必ず誰かに嫌われる。何度も言うが、この枠の浸透度は桁違いなのだ。そんな中で細かい事をいちいち気にしてても仕方がない。格式のある、皆が夢を見続けてきた連続テレビ小説。そんな歴史の長さを皆無意識裡に感じながら毎朝流し見しているのだ。

だから、たとえ温かみのある曲にしようとしても、美意識だけは失ってはならない。「嗚呼、綺麗で温かなメロディーだね。」なんていう風に言って貰えれば成功だろう。美しい曲が無事完成する事を祈ります。頑張れヒカル。