無意識日記々

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映像商品の為に会場にマイクを30本立てた男

小森くん師匠、相変わらずキレッキレである。

「米津玄師、宇多田ヒカルOfficial髭男dismらを手がける小森雅仁の仕事術(後編)」

── こだわりが詰まった宇多田のライブレコーディング

https://natalie.mu/music/column/344551

特に笑ったのはここだわ。

── 例えばアコースティックギターって、ハウリングの問題もあるのでライブだとほぼラインで収音するんですけど、ライブ盤用の録音をするためだけにアコギにクリップマイクを付けさせてもらって。(中略)ライブPAという意味では必要がないんですけど、駄々をこねて導入させてもらいました。

つまり、『Laughter in the Dark Tour 2018』映像商品の為だけに、ギタリストの人に「ちょっとすいません、ライブの出音とは関係ないんですけど…」といってマイクをつけたのだ。図太い。まぁ彼が現場でのPAと録音の両方の担当だったから可能だったんだろうな。これのせいでギターが弾きづらかったりライブでの出音がよくなかったりしたら総スカンですよ。やはり師匠は胆力が違う。アシスタント時代にヒカルにパシリをやらされて鍛えられてきただけの事はある。レコーディング・スタジオで『酒買ってきて~』とか言われてたのだヒカルに。堪ったもんじゃないですよ。こらそこ「それご褒美じゃない?」とか言わない。

ごほん。そこらへんのこともちらっとだけ触れてくれている。(前編より)

── エンジニアになりたくて東京の専門学校に入学し、その後バーディハウスに入社しました。(中略)渋谷のBunkamura Studioにアシスタントエンジニアとしてしばらく勤務して、そこでつながりができたクライアントさんからちょっとずつメインエンジニアのお仕事をもらえるようになり、フリーランスになりました。

アシスタントをやっていたのは8,9年だそうで、なるほど、その時代に『HEART STATION』などの制作に携わっていたのね。で、フリーになってから『Fantome』のヴォーカル録りに参加して現在に至ると。フリーになってからも御指名が掛かるとはやはりアシスタント時代からタダ者じゃなかったんだろうな。ヒカルも年下のスタッフがスタジオに居てくれて喜んでたっぽいし。14歳でスタジオに入ったって周りは大人ばっかりだもんね。

でまぁ見出しにもある通り、『Laughter in the Dark Tour 2018』では30本のマイクを使って聴衆の声を拾っていたらしい。道理で今回はやたら客の声がハッキリ聞き取れるなと思えたわけだ。ちゃんと狙って録ってたんだね。

ギターの音を空気から拾ったり聴衆マイクを30本立てたりといった工夫の数々を施して録音したトラックはどうやら100以上。それを我々の聴いている2トラックに落とし込んだのだから間違いなく気の遠くなる作業なのだが、それが見事に結実しているのは我々が日々触れている『Laughter in the Dark Tour 2018』映像商品の抜群のサウンド・クォリティが証明してくれている。小森くん師匠の拘りに拘り抜いた匠の技の結晶だったのだ。これは次のヒカルの作品も小森くん師匠で決まりかな? そうは問屋が卸さない? さぁどっちでしょうね?