『誰にも言わない』の構成で絶妙だと思ったのは
『明日から逃げるより
今に囚われたい
まわり道には
色気がないじゃん』
のパートだ。ここ、メロディ自体は『一人で生きるより〜』『罪を覚えるより〜』の箇所とほぼ同じなのだが、「尺は同じなのに歌詞の量が半分」なのだ。
どういうことかというと、一番のBパートの歌詞が
『一人で生きるより
永久に傷つきたい
そう思えなきゃ楽しくないじゃん
過去から学ぶより
君に近づきたい
今夜のことは誰にも言わない』
であるのに対して、
『明日から逃げるより
(何にも言わない)
今に囚われたい
(何にも言わない)
まわり道には
(何にも言わない)
色気がないじゃん』
という構成になっているのだ。「(何も言わない)」箇所は、文字通り何も言わない・歌わない。ただの全休符小節である。
ここが何故絶妙なのかというと、一番二番の『一人で生きるより〜』のパートがそれぞれその直前の『いくつもの出会いと別れ〜』『完璧なフリは〜』のパートを“受けて”立ち上がるメロディ&歌詞であるのに対して、『明日から逃げるより〜』のパートは、ここから始まる起点となるメロディ&歌詞として機能しているからだ。同じBパートでありながら、役割が異なる。その差異を、この「(何にも言わない)」パートが表現しているのである。
更に踏み込んで言えば、『誰にも言わない』は、ABCでまずひとまとまりの歌、さらに次にBCDでまた別の構成のひとまとまりの歌が重なって組み合わされた楽曲であるとも捉えられるのだ。同じBパートが違う役割で機能しているとは、そういう事でもある。
そこのところを突っ込んでいくには全然尺が足りないのでこれについてはまた稿を改めてのお楽しみということでひとつ。