前から度々触れている「『誰にも言わない』の歌詞に含まれたメッセージがどれくらい理解されているのか」問題、ほんと捉えるのが難しい。
ヒカルの発言をずっと追ってきてる身からすれば、歌詞から窺えるのはどれもお馴染みな思想・哲学ばかり。
『過去から学ぶより君に近づきたい』などはすぐに『いつか結ばれるより今夜一時間会いたい』とか『先読みのし過ぎなんて意味の無い事は止めて今日はおいしい物を食べようよ』とか似た傾向の歌詞が思い浮かぶし、『I won't blame anyone else(誰のせいにもしない)』というのも、「どんなことを言われても自分のせい/責任なのがいい」とことある事に言ってきたのを思い浮かべる。『誰かのせいにすりゃそれはまたそれで
つらいだろう?』なんて歌詞もあったしな。
『感じたくないことも感じなきゃ 何も感じられなくなるから』などは最近とみに口にしているように思う。『パイセンに聞け!2』では『他者からの賞賛を信じるなら、他者からの酷評も信じなきゃいけないし、必ずその両方がセットで来るからな。』という名言を吐いているし、同じ事を又吉対談でも言っていた。その為、ここの歌詞は特に親しげに話しかけられているように感じたものだ。
『一人で生きるより 永久に傷つきたい そう思うのはただのワガママ』あたりは少し新しいかな。歌詞で『傷』といえば『傷つきやすいまま大人になったっていいじゃないか』と『傷つけさせてよ治してみせるよ』とがあった訳だが(他にもあるけどね)、『永久に傷つきたい』はそれらのハイブリッドだと言える。自分が傷つくことを歌った『タイム・リミット』、相手を傷つけることを歌った『For You』、そして相手に傷つけてもらう事を歌ったのが『誰にも言わない』だ。こればっかりは相手にお願いしないと成り立たないので『ただのワガママ』と歌っているのがなんとも潔いというか、「誰のせいにもしない」と言うだけの事はあるなと感服する一節だわね。
……なんていう風に、過去の歌詞や発言が頭に入っている人ほど初めて聴いた時から馴染み易い、馴染み深い歌詞が並んでいる『誰にも言わない』なのだけど、そうでない、あまりヒカルの言葉に親しんでいない人にはどんな響き方をしているのだろう?というのが気になっている訳だ。しかし、この歌が大好きという人は大抵ある程度長い間ファンをやってる人が多くて、なかなかそういう声が届いてこないんだよね。出来れば、この歌を聴いて初めて宇多田ヒカルに興味を持ちましたという人が見つかればいいんだが、あー探すの面倒臭い。取り敢えず歌詞サイトだけは辿っておくかな……。もうちょっと売れて母数が確保出来れば巡り会える確率も上がったのだろうけど、例えばダウンロード数とか『Time』の3分の1くらいだもんなー。やれやれ。