無意識日記々

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Paint It… Rock !

チャック・ベリーの音源を聴いていると同じ曲であっても年代毎にサウンドアレンジが随分と違っていて楽しいのだが、彼のヴォーカルスタイルだけはいつの時代も全く変わらない。彼の偉大さのひとつは、どんな編成、どんな編曲であっても彼が歌えばロックン・ロールになる事だったのだ。

兎に角言葉の乗せ方が上手い。結構早口が多い上に言葉遊びもふんだんであたしの耳では英語自体はサッパリ聞き取れないのだが、それでもひたすらに聴いていて気持ちいい。で歌詞を読むと案外ちゃんと文章になっている。ロックン・ロールのリズムにヴォーカルを乗せようとするとどうしてもリトル・リチャードの「トゥッティ・フルッティ」みたいに意味の無い奇声の連発になるものなのだが、チャック・ベリーはそんなリズムの中でストーリーを語れた。ノーベル文学賞を取ったボブ・ディランとは対照的な、これまた偉大な作詞家なのである。

そんなチャック・ベリーの曲「カム・オン」のカバーでデビューしたのがかの有名な英国のロックン・ロール・バンド、ザ・ローリング・ストーンズだが、彼らの代表曲「黒く塗れ〜Paint It Black」のフレーズをフィーチャーした曲が宇多田ヒカルの『甘いワナ〜Paint It, Black』だ。

この『甘いワナ』、ヒカルのレパートリーの中でも際立って異色な存在だ。デビュー当時はR&B云々と言われていたが、ハイテンションでアッパーかつファンキーなロックン・ロール・テイストは結構大人しめなファースト・アルバムの中でとてもいいアクセントになっていた。あんまりにもノリがいいのでデビュー・ライブ『LUV LIVE』では1曲目で「掴みはOK」しにきてたし、『Bohemian Summer 2000』では終盤の最もテンションの上がる場面に配置されていた。初期のヒカルにとってライブとなったら欠かせない楽曲だったのだ。

で、この『甘いワナ』の歌詞というのは、そのボブ・ディラン的な文学価値云々より、チャック・ベリー的なロックン・ロール・バリューの高い内容となっていて……という話からまた次回。……いつも次回とか言ってて知らん顔して全然違う話始めるけどねこの日記は……。