無意識日記々

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ねぇ、かあさんどうして

今日は『Be My Last』の発売15周年記念日。映画「春の雪」の主題歌だ。三島由紀夫原作の大作「豊饒の海」の第一部を映像化したこの作品でヒロインの綾倉聡子役を務めた竹内結子の訃報が届いた。謹んでお悔やみ申し上げます。

映画「春の雪」はなかなかの会心作で、勿論というべきか竹内結子も見事な好演を見せていた。主題歌のフィット具合はぐうの音も出ないほどで、昔からプロフィールの好きな小説欄に三島由紀夫の「金閣寺」を挙げていたヒカルに死角なんぞある筈もなく、悲恋の物語を圧巻の表現力で余す所なく盛り立てている。『Be My Last』の歌詞には、妻夫木聡演じる所の松枝清顕からの視点のみならず竹内結子演じる綾倉聡子からの視点も交えているとヒカルはインタビューで語っていた。こと「春の雪」に関しては、主人公はこの二人だったという解釈だったのだろう。

大作「豊饒の海」は主題に輪廻転生をもつ。シャンソンの名曲“Hymn a l'amour”の歌詞を、キリスト教的「最後の審判」の世界観から仏教的な「輪廻転生」の世界観に書き換え、『ぼくはくま』で『前世はきっとチョコレート』と歌ってNHKと一触即発になったヒカルにとってこの作品に纏わる歌を書けたのは作家冥利に尽きたのではないかと思われる。素晴らしいコラボレーションとなった。

竹内結子は昨年末に出産したばかりで、嬰児を遺して旅立った事になる。事情などはわからない。本人すらわかってなかったのかもしれない。彼も大きくなったら『かあさんどうして 育てたものまで 自分で壊さなきゃならない日が“来た”の?』と疑問に思う時が来るかもしれない。

本当に突然の訃報だったらしく、事務所から発表されたコメントも茫然自失と慌ただしさの両方が伺い知れる内容だった。それにしても、葬儀を終えてから訃報を伝えてくれるケースも多い中、遺族が混乱している状況で一分一秒を争い不確定な死因を添えて速報を流す神経たるや。そんなの一日や二日教えて貰うのが遅くなったからといって我々の生活に支障などなかろうに。誰とも知らぬキャプ画ツイート等によるとこども向けアニメの放映中にも速報テロップを流したらしい。大人でも参ってるのにこどもにトラウマを植え付けにいくとかもう言葉もない。ここでこうやって取り上げてる私も同じ穴の狢なのかもしれませんが。悩ましいです。

今は観ていないが、昔は朝の連続テレビ小説を毎回観ていたので、竹内結子が主演を務めた「あすか」も全回視聴した。宮本文昭が演奏する主題曲「風笛」は今でもよく聴く曲で、当然ながら竹内結子の初々しいおばちゃん姿(それ最終週だけや)もよくよく覚えている。まぁ、最近の活躍を知らない身がそれ以上言うこともないか。宮本笑里も、父の演奏と竹内結子の姿が重なると呟いていたな。竹内結子知名度からして、読者の皆さんの中にも落ち込んだまま週明けを迎えた方々もいらっしゃるかと思う。悲しくてもお腹は減るし眠くなる。『Be My Last』は、手の届かなくなる悲劇を綴った歌だ。共感の癒しになるかもしれない。ますます落ち込むかもわからない。だが、思い出を刻んで前に進むことは出来るようになると思う。ひとまず、今一度耳を傾けてみては如何だろうか。