無意識日記々

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こゆのを「きな臭い」って言うのか。

米国大統領選挙についてヒカルは、事前には日本語と英語の両方でツイートしたのに、事後には英語でしかツイートしなかった。本当によく考えている。

昨日もちらっとツイートしたのだが、例の『Thank fucking goodness.』ツイートは、確かにトランプ側の支持者たちから反感を買う可能性がある。何しろ3億を超える人口の約半分を敵に回す事になるのだ。キングダムハーツをはじめとして世界的展開を見せる宇多田ヒカルにとって母国の半分が敵になるのは一見おっかないことのように思える。売上が半分になるのではないか、と。

しかし、恐らくそれは杞憂になるだろうと見ている。そもそも、米国で国際的に活躍するミュージシャンたちの大半が反トランプを声高々に表明していたのだ。勿論世界平和の為の理想を掲げているという解釈でいいのだが、敢えて下世話な見方をしたとしても、売上や評判の面で反トランプ表明にはメリットは大きくともデメリットは小さいという判断がはたらいたのだろうと思う。でなくばそういった歌詞を載せた歌を次々にリリース出来るはずがない。レコード会社が嫌がるだろうよ。

つまり、国際的に活躍するミュージシャンにとって反トランプ的な思想を表明するのは追い風になる可能性が高いのだ。なお、勿論ミュージシャンの中にも親トランプ勢が存在するのだか、彼らは主に米国国内のみを市場とするような人達だ。トランプ自身が自国一国主義なのだから自然な事だろう。世界中にファンをもつヒカルのようなスタンスとは全く違うクラスタに属しているとみていい。

そんな状況だから、英語で反トランプを匂わせるツイートをするのはリスクよりも遥かにメリットの方が大きい。そう想定できる。しかし、ヒカルは日本語では呟かなかった。これがポイントだ。日本語でその事について触れると看過できないリスクが生じると考えたのではないだろうか。

そもそも、日本では(米国と異なり)音楽ファンの多くが、ミュージシャンが政治について語ることを快く思っていない。自分もそういう節があるからよくわかる。だから支持者が誰であろうと元々政治の話題について触れること自体にリスクがある。ところが今回ヒカルは米国大統領選挙に投票する事を(米国で大統領選挙が近々ある事を)わざわざ英語と共に日本語でもツイートしている。これは、日本の皆も是非注目して欲しいという願いの表れであったのだろう。日本ではミュージシャンが政治的話題について語るリスクがあるのを知っていてなおそれでも訴えたい思いが強かったのだ。

しかし昨日は日本語でツイートしなかった。これは、反トランプである事を日本で気取られるのはそれより更に大きなリスクを伴うという事を察知していたからではないだろうか。米国と違い、日本では何故かトランプを熱烈に支持する層が国中に満遍なくいるように見えている。今回赤い蜃気楼/レッド・ミラージュという言葉で話題になったように、米国ではトランプ側である共和党支持層の多寡は地域差が激しい。日本では勿論そういう事はなく、極々普通の人たちの中に大量に親トランプ層がいるように見えている。

だが、この「見えている」というのが曲者なのだ。この見え方は与党の政策の賜物である為実数が見えづらい。何しろ20年近く鍛えられてきたステルスメソッドなので、一般人にはそれが党員やサポーターの皆さんの発言かどうか見分けがつかないのだ。それに若者層が大量に染まっているので、最早誰がどこまで思想を塗られているか判然としない状況になっている。

私にはそこらへんちんぷんかんぷんなのだが、ヒカルですらその実数を把握しかねているようにみえる。わからないのだ。党是として親トランプの指示が出ている中でトランプ落選を呟くリスクがどれほどのものなのかが見えてこない。慎重になるのも無理はない。

ヒカルの政治的な立場は昔から一貫しているので(ユーゴの革命への反応とか教科書裁判とか色々あったよね)、そこは多分ロンドンに移り住みこどもが出来てもそんなに変わっていないと踏んでいる。まぁだからこその『Thank fucking goodness.』だったのだが、あの慧眼のヒカルですら今の日本のポリティカルステルスマーケティングのスケールが把握出来ていないとすると、やれやれ、我々ファンもやはり普段は政治の話題は極力避けるべきかもわかりませんね。ほんと、慎重にならざるを得ないのでした。