無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

映画の話の方を先に。

ラスキスがいい曲過ぎて困る。もうすっかりノリノリである

多分曲についてはこれからなんぼでも語ることがありそうなので、映画についての話を先に記しとこ。内容に触れるのでまだ観てない人は気をつけてくださいね。

自分は1997年の深夜再放送から「新世紀エヴァンゲリオン」を観ているからもう24年になるのか。当時の劇場版も観に行った。それを踏まえると、「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」が到達した地点は、九割方その20世紀のTVシリーズや劇場版と同じ所だったように思う。碇ゲンドウが本音を吐露すれば物語が終わる。明快。

では新劇版とは何だったかといえば、残りの一割、つまり真希波・マリ・イラストリアスによって幾分か書き換えられた部分であって、それは裏話をすれば21世紀に入ってから現在のパートナーである安野モヨコ先輩に巡り会ったが故に生まれたキャラクタということで、庵野総監督が結婚して得たものを加えたという話なんだがそんな挿話は映画だけ観る人にはあんまり関係ないやね。

それを置けば新劇版の価値と意義は「ちゃんと作った」という一点に尽きる。アニメーション技術を養い育み昇華させる為に時間と資本と財力を注ぎ込むことが必要で、それが現実に出来た点が旧劇版との違いだ。いわば旧劇版はデモとかプロトタイプであり、新劇版がプロとしての完成品である、という、極々極々当たり前というかみんなわかりきった話が結論となる。

でも、それってあらためて凄いなと。プロジェクトがお金や時間を得られるということはそれだけの多くの人達がアニメーション映画が観たい、作って欲しいと言ってる訳でね。文化の豊かな国で時代でよかったなと。アニメーターの皆さんたちの境遇はまだまだのようですが、それでもなお、こうやってアニメーション映画が楽しめるのは凄いなぁ──ということをアニメーション映画を通して表現したのが「新世紀エヴァンゲリオン」だったのだ。だからラストシーンはアニメーションから実写の映像にシームレスに繋げられる。アニメーション映画は終わりだよ、お家へ帰ろうね、と。旧劇版ではもっと露悪的ともとられる方法論だったが、今回は観客に対してとても優しいやり方をしたな。

「みんななんでそんなに優しいんだ!」─「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」の劇中、中盤に差し掛かる所でシンジがそう叫ぶ。ここから物語が回り始めるのだが、それはそこまでの穏やかな時間の流れを観ていた観客の(私の)正直な感想であって、「あぁ、それをちゃんと劇中のキャラクターに言わせるんだ」と納得できたことで私はシンエヴァが良質な作品に仕上がっている事を確信した。畢竟、その確信は実体を伴って届けられた。ネットでの反応をみても、概ね好評なようでホッとしている。あたしが制作したわけでもないのにね(笑)。

ただ、余りにも(それなりに)綺麗に終わらせてくれたので、そこが「エヴァらしくない」といえばらしくない。観終わった後に「どういうことだってばよ」と言いたくなることがあんまりなかった。細かい点ではいくらでも謎は残っているが、大筋は入ってきたなという感触がある。なので、「あー、終わったんだ!」というのが正直な感想だ。これを素直に言わせてくれたのたから終劇としては合格、いや至高だろう。未練が余り残っていない。

そういう意味では、この映画に関してはそんなに語ることが、というより語りたいと思うことがない。観てくれればそれで伝わるだろうと思う。それは作品として大変高品質であるということだ。四半世紀かけてここまで辿り着けて、本当によかった。

私も観客として歳を重ねたんだなと思ったのは、出てくるキャラクター全員に対して心から共感した事だ。喧嘩してても敵対していても、どちらの言い分も痛いほどよくわかる。そう思える程にしっかりとキャラクターの性格を一貫して崩さずに描けている点が作品としては出色なのだが、同時に、観ていてこちらとしては何の葛藤もなく、スリルなく鑑賞してしまった感が強い。なんだろう、ある意味、こういう作品は「もう要らない」のかもしれない。少なくとも、私個人にとっては。そして、要らなくさせてくれるほどに、シンエヴァはよくできていたのだ。

今後は、『One Last Kiss』と絡める形で映画に触れる事は多々あるだろうが、エヴァについてそう熱心に語ることはもうないかもしれない。序破Qシンを通して観れば、ちゃんと伝わる。いやQの置いてきぼり感は残るかもだが、シンエヴァでそれは幾らか和らぐだろう。許容範囲だと思う。

2007年に復活してヒカルに数々の名曲を生み出させた事に改めて感謝したい。スピンオフなどは発表されるかもしれないが、エヴァの物語はこれで綺麗に幕を閉じるだろう。あらためて、ありがとう。そして、さようなら全てのエヴァンゲリオン

…っていう風にもぞもぞする感触を残して〆るのってあたしのガラじゃあないんだけどなぁ(笑)。まぁ、今回ばかりは構わないかな。譲っておくことに致しますよっと。