無意識日記々

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Uh wow ! Ooh oh !

オリコンによると『One Last Kiss』は単曲でもアルバムでもダウンロード数今年度最高を記録したそうな。まだ集計が始まって間もない(2021年度は「2020/12/28付」からだそうで)けれど、ひとまず市場的にも「今年を代表する一曲」のうちのひとつとして数えられるようになるのは間違いなさそうね。

ネットで歌詞がイジられるようになってるのをみて、嗚呼、若干ではあるものの社会現象化してんのかなーと。特に歌い出しの『初めてのルーブルはなんてことはなかった わ』が気に入られてイジられとる。現実のイジりはイジメと一字違いでしかないが、歌詞で遊ばれるのは愛されてる証なのかもね。

兎に角フックラインがシンプルなのよね。特にサビの『oh oh oh oh oh』は革命的ですらある。毎度指摘してるように、シンプルなフックラインは思いつくのが難しいのではない。それでイけると判断して世に出す勇気、判断力が問われるから難しいのだ。

ヒカルがここに歌詞を載せなかったということが大きい。16ビートで四小節だからその気になれば64文字載せてもよかったところをこうした。この思い切りの良さは『traveling』の出だし、

『Da da lu da da lu da da lu da da lu

 Da da lu da da lu da da lu Uh wow 』

に通じるものがある。実際、

『Oh oh oh oh oh oh Oh oh oh oh oh oh

Oh oh oh oh oh Oh oh oh Ooh oh』

こうやって書き下して見てみればこの二つが同型であることがわかる。最後を『Uh wow』或いは『Ooh oh』で締め括るところも同じだ。

ヒカルがこうやって歌から「歌詞を抜く」時は、大抵「本能で歌っているパート」だったりする。曲調は全く違うが、『Be My Last』なんかは冒頭の『かあさんどうしてそだてたものまでじぶんでこわさなきゃならないひがくるの』で言いたいことを言い切ってしまった為サビメロは慟哭の表現としてひたすらタイトルをリフレインするだけ。最後は「あぁあ ぁあぁあ」で締め括る。この曲、普通に日本語歌詞を載せたら『SAKURAドロップス』並にキャッチーなメロディなんだけど、これのせいで随分取っ付きにくくなってしまった。しかしそれはこの曲が叙情的なバラードだからで。心情を言葉を避けて嗚咽と慟哭で綴ってしまうと取り付く島がないが、今回の『One Last Kiss』(や『traveling』など)は本能のままに身体を揺らそうというコンセプトだから、歌詞がない方が口遊みやすくて取っ付きやすい。ここの親しみやすさが大ヒットの一因となっている。

そして、そうやってリズム本能に即した構成をしているからこそ宇多田ヒカルの本領発揮たるメロウで切ない見せ場としてブレイクの場面が二箇所作られているともいえる。いつも以上にノリノリになった分をそこで人類補完計画しているというか。いやただの補完でいいんですがどうしてもエヴァが絡むとね。

この曲、『One Last Kiss』はライブで大変盛り上がるだろうね。『traveling』と同等かそれ以上の支持を得そうな予感。例によってそれを目の当たりにするまでには大変まだまだ時間がかかりそうですけどねっ。