無意識日記々

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『PINK BLOOD』にみる“自立観”

『王座』や『椅子』といった語は役割や立場を示している筈だ。そこがちょっと興味深い。というのもその前段の歌詞が

『自分のことを癒せるのは

 自分だけだと気付いたから』

だからだ。ここだけを読むと、では他人に頼る必要がなくなったんですよね貴方、という風にもとれる。その為、ここで他者自体が不要になったのねと解釈してしまうとそこでわからなくなる。

実際は寧ろ逆で、人に頼る必要がなくなって始めて人は社会などの属する集団の中で自分自身の立場を確立し役割を担う事が出来るようになって他人と協力し始められるのだ。自分じゃ何も出来ないから群れて誤魔化す、のではなく、出来ることがあるから人と群れて大きな事を成すようになれる。

そういう、人としての「自立観」がこの『PINK BLOOD』には通底しているように思われる。

『自分の価値もわからないような

 コドモのままじゃいられないわ』

の一節などはそのまま「自立したオトナになりなさい」というメッセージだろうし、

『心の穴を埋める何か

 失う事を恐れないわ』

の一節も、心の穴を埋めてくれる何かを誰かに頼る事無く『癒せるのは自分』と言い切れるようになったからこそ出て来ているのだと言える。なおここでも『失う』という『喪失』シリーズに連なる語が出てきてますねぇ。『Time』での『失ってから気づくのは』、『One Last Kiss』での『止められない喪失の予感』などからの流れをここでも引き継いでいる。何れも、失う事自体を肯定的にというか、受け容れる感覚を歌っている。

そして、その失うことへの受容と肯定が「自立観」を構成する重要な要素のひとつだということなのだろう。失っても自らの手で埋められる、転んでも自力で立ち上がれる。自分自身の足でいつでも立ち上がれるから自らすすんでそこに座る。それが『王座』であり『椅子』なのだろう。ヒカルがインスタライブで「挫折」について語った時に「そんなのはただの概念」と言い切れたのは、挫け折れそうになっても自分の足でまた立ち上がれるからだった訳だ。しっかり歌と繋がっているのでした。

なお、『王座』というキーワード自体はこのあと「不滅のあなたへ」のストーリーが進んでいくとそれに該当するキャラクターが現れるのでそれを指してもいるとみるのが適当だろう。間違いなくヒカルのお気に入りキャラだと私は思っているのだが、下手にインスタライブとかで触れたりするとネタバレになるかもしれないので控えているのだろうかな。アニメで登場するとなると30話くらい後になる、か。楽しみではあるのですが、そこまで果たして行くのかどうか。アニメスタッフの皆様におきましては、NHKからの潤沢な予算に胡座をかくことのなきよう、しっかりとプロモーションしていって欲しいものっす、、、。