無意識日記々

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大きすぎるブレとズレとを無用にするし

「アルバム『初恋』で独りで仕上げた曲は『残り香』だけ」というヒカルの発言に驚いてクレジットをみると確かにそこだけ人の名前が極端に少なく。『EXODUS』の八割をたった四人の作業で作っていた頃とは随分と様変わった。

次のアルバムは更にそれを推し進めるかと思いきや、この感染症禍。なかなかひとつの部屋に集まってセッションとはなりづらい。そんな中でも2021年はワクチン接種が進み、特に英国ではその進度が顕著で……と思ってたら次は変異株。全く、目まぐるしい。

そんな中でヒカルがNYのスタジオに入ったようだという(当事者からの)リークもあり、それならスタジオでの他のミュージシャンたちとのセッションも結構順調に進んでいるのだろうかなと。経過具合はわからないけれど、ヒカルからの発信は今年に入ってからずっとスタジオ入りをしている/しようとしている雰囲気が伝わってきてはいる。

なかなか作業量が把握出来ない。いつものペースであれば既にレコーディング自体は終了してミックスに入っている段階かなとも思えるが、今回とカルが他者とのセッションを重視しているとなるとそれによるかなりの遅延も覚悟せねばなるまいて。一回のセッションに何人集めるか。一人増える度にスケジュール調整は格段に難しくなる筈で。そこらへんの苦労話もまた聞けたらいいんだけど。

で。セッションの場といえば「空気を読む」「他人の表情を読む」事が何より大切で。その上で、お互いの共通の知識と感覚に基づいてあれやこれやと音を試していく訳だ。そういうのを『もう充分読んだわ』というヒカルは、では、もうセッションに興味を失ってしまったのか?

歌詞なので真正面から受け止めるのは愚かに過ぎるのだけれど、恐らく、そうやって受け止めたとしても、「寧ろ逆」なのだろうと思う。『PINK BLOOD』で歌われたその箇所に漲るのは「自信」であって、ならば、場の空気も他人の表情も読み取った上で自分らしさを出せるのが今のヒカルだ。セッションの中で個性を主張するのに躊躇う必要が無くなった、とも取れる。ひとからのアウトプットを無視することなしに、だからといって他人の意見に左右されて右往左往することもなく、しっかりとこちらからもアウトプットを返していける。「更にセッション上手になったよ」という宣言なのだと、こちらは受け取った。

ウルフルズの「ゾウはネズミ色」という歌に(タイトルからしていいよね)

「人の言うこと

 聞きすぎるとブレる

 聞かないとズレる」

という歌詞が出てきていて相変わらず大変お気に入りなのだが、ヒカルはこのバランスをとるのが極端に上手く、ブレともズレとも無縁な人だ。それは、周りの状態を読み取る能力と自らの個人としての価値観と感性を研ぎ澄ませる能力という、相反する、普通はどちらかを持っていたらどちらかとは無縁になってしまうような二つのその両方を持ち合わせているからだ。大谷翔平が投打で出場を続けてるのと似てるかもね。あの子も今年は随分凄まじいことをしてるみたいね……。