無意識日記々

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物語のBADモードを担った人たちへの歌なのか

先週金曜夜無事テレビドラマ「最愛」が最終回を迎えた。というわけでネタバレ書くので気ぃつけてぇね。

ネット上では「いい最終回だったねぇ…」としみじみ呟くテンションでは場違いなくらいの絶賛の嵐で、正直気後れしてしまった。いやはや、こんなに1つのドラマが賞賛されるってことあるの? 名作誕生の雰囲気ね。

そんな中、ヒカルの『君に夢中』はやはり劇中で大フィーチャーされていた。イントロからアウトロまで途切れることなくフルコーラスの大盤振る舞い。最終回に相応しい過去最高のVIP待遇でしたねぇ。

注目の『序盤は完全ノーマーク~』の部分もきちんと流れて。しかしあそこでいちばんクローズアップされたのは『嘘が下手そうなヤツあるある』の部分だったか。台詞との重なりの中で際立って響いていた。歌詞と台詞が重なってしまうのは第1話の「駅伝邪魔!」以来懸案だったのだがこの最終回ではかなりフィットしていたね。

思い出したのが『誰にも言わない』をフィーチャーした「サントリー天然水」のCMだった。あそこでも、ヒカルの歌声とヒカルの朗読が重なりながら不思議な協和をみせていた。言葉自体に通じるモノがあるからだろうが、「最愛」制作陣はあそこでの手法を少し意識したのではないかなと感じた。普通は主題歌を歌った歌手の他の仕事を参照するなんてことはないのだろうが、今回はプロデューサーの新井順子氏がかなり熱の入った宇多田ファンということで、そういう見方も可能なのではないかと思わされた。

全10話に渡って目立ちまくった『君に夢中』。最終回に至ってやはりヒカルは物語全体の構成と結末を教えられた上で曲と詞を書いたのだなと確信し…ようとしたのだが、しかし、宇多田ヒカルという人は千里眼が過ぎるので、それすら聞かずに勝手に自分で見通して制作できてしまった可能性もあるのよね。ここはちゃんと本人の言葉を確認したい。『BADモード』発売時のインタビューに期待しよう。

曲がルート音以外で終わることからドラマもビターエンドになるのではと予想していたが、半分は当たって半分はハズレた格好か。確かに加瀬さんについてはなんとも切ない幕引きだったが、最後大ちゃんと梨央がラブラブで手を繋ぐ姿はあれをハッピーエンドと言わずしてなんというかと云わざるを得ない御馳走様な一コマだった。苦さと甘さの両方のブレンドが、この「最愛」のテイストだったのだろう。

そして、ここに至って、『君に夢中』を加瀬さん視点で捉え直すと実によくハマるという知見が手に入り。確かに梨央によく『今どこにいる?すぐそこに行くよ』的な事を電話してた気がするし。何よりまさに彼は『人生狂わすタイプ』だったしね。『来世でもきっと出会う』というのは、今世では金輪際梨央と優に会うつもりはないという決意の裏返しかな。これもまた切なし。

この、終わってみれば確かに重要人物からみた歌詞だったわ、という結論も、あの「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」で、映画を観終えた後に『One Last Kiss』や『Beautiful World』を聴くとなるほどこれは碇ゲンドウの歌だったのだなと合点がいったあの展開によく似ている。加瀬さんにしろゲンドウにしろ、悪役とまでは言えないが、作品世界の中で負の面の鍵を握った登場人物であり、そんな彼らの視点から主に歌詞を書いたヒカルの優しさになんとも心がキュンとなる。もしかしたら『BADモード』というアルバムタイトルも、そういう、映画やドラマの中で主役と相対する悪役や敵役ポジションにある人たちの心情を綴った歌詞が収録曲に多いことからつけられているかもしれないね。だとしたら、凄く新しくてやっぱり切ない。とても宇多田ヒカルらしい名付けなのかもわからないわ。