無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

LSAS2022で残念だったこと

『Hikaru Utada Live Sessions from Air Studios 2022』で何が残念だったかって、当然『気分じゃないの(Not In The Mood)』と『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』が歌われなかった事である。選曲の問題以前に、非常にシンプルに、2曲ともスタジオライブ収録時点で曲が完成していなかったのが理由だ。こればっかりはどうしようもないわね。

そこの残念さを『Hotel Lobby』と『About Me』で帳消しにしたのは流石だった…と私が言えるのは『EXODUS』への思い入れがあるからで、18年前の全編英語歌詞アルバムを今のファンがどれくらい聴いたことがあるかというと未知数だ。まぁここ読みに来てる人はあらかた聴いてるだろうから気にしないでいいかな。

話を戻そう。特に『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』に関しては、『BADモード』アルバム内で最も「これライブでどうやるつもりだ?」感が強い1曲だったから、これの初御披露目は本当に注目の的となるだろう。ある意味、スタジオライブで初披露でなくてよかったのかもしれない。というのも、この手の長い曲を観客の居ない場所でミュージシャン同士のみでセッションさせるとリスナーの手の届かない世界まで飛んでいってしまう事が往々にしてあるからだ。まぁそのお陰でジャズやプログレが発展したのだからそれ自体は様々なのだが、宇多田ヒカルはPop Musicianなので、やはりそこはリスナーを、オーディエンスを巻き込んでいく事を期待したい訳で。となるとそこは、ちゃんと目の前に聴衆が居てそのリアクションを感じ取りながらセッションが進んでいくのが望ましい。

その受け皿として『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』は打ってつけだ。イメージとしては『WILD LIFE』の『Eclipse』がマッチョにパワーアップしたものを思い浮かべるといいだろう。生身の人間が演奏すると熱気が違う。LSAS2022でも、恐らく譜面上は基本的に同じであるにも拘わらず、『PINK BLOOD』などには人力演奏の魅力が溢れていた。あれが更に甚だしくなるのが『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』なのだと予測される。

一方、『気分じゃないの(Not In The Mood)』はそれとはまた全然違った意味でライブ演奏に対する興味が尽きない。何しろ歌詞がある日のヒカルの日記なのだ。『作詞をまるでmixiの日記をつけるかのような作業だと勘違いされることもあるけどネ。』と言っていた人がまるで日記をつけるような歌詞を書いてきたのをどんな顔して歌うのか。いや、下世話な意味ではない。それくらいに今迄になかったコンセプトの歌詞に対する生歌のアプローチもまた、今迄になかったものになるだろうから、ね。

その意味で代わりに歌われた歌が『About Me』なのがヒントになる…という話は前に一度したっけね。てっきりこの歌を生で歌うときはギターを抱えて弾き語りだと思ってたのだけどそんなことはなく。今のヒカルは、どこか淡々と生で歌を歌える感じがしてとてもよい。『嵐の女神』も期待できる程に。

だが、そこまで来ていても『気分じゃないの(Not In The Mood)』を歌うのは難しい気がする。この歌って、誰に向けて歌えばいいかわからないからね。というか、お客さんに向かって歌う感じでこのトーンが出せるのか? 今度は『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』とは真逆に、一度スタジオライブで歌っておいた方がよかった気もしたな。アリーナでこの独り言みたいなのを聴かせる感じを掴むのは、ある意味、アリーナやスタジアムに慣れまくってからでないと無理かもしれない。その昔ジョン・ボン・ジョヴィがスタジアムツアーに慣れ過ぎた所為で横浜アリーナでコンサートをやるときに「まるでバーみたいに近いね」と言っていたのだが、それくらいの感覚を持てた方がいい気がする。

その、ライブで演奏される事を考えたときに、ではこの曲でいちばん映えるなと思うパートはどこになるかなといえばダヌくん提案の『Not, not, not in th mood~♪』の所なんじゃあなかろうかなぁと。あそこでなんとなく聴衆と歌い手が共有と共鳴を持てる気がして。あやつ6歳にして既に天才な気がするわ。次のヒカルのアルバムでも仕事しそう。いやその前に、夏休み中のツアーだったらもうステージで歌ってそう。

そんなあんなこんなが楽しみになる次のコンサートツアーは果たしていつになるのやらですわねぇ。やれやれ。