前回「それほとんど言い掛かりだよね?」と言われかねない指摘をしたが今回はもっと話が細かい。「そんなん翻訳に従事してる人同士でやっといてよ」とかって言いたくなるヤツだ。
私が気になった点はこちら。
「……大学に行くまではほぼインター系の学校にいたので、あまりにも国も人種もごった返してて、逆に人種を意識しないでよかったんです、みんな“人間”、みたいな。そうじゃなくて出身国や人種を意識する環境にいると、もっとシンプルだったらいいのに、って思うことが多くて。」
この真ん中の「そうじゃなくて」って要る!? ない方がいいと思うんだけどねぇ。これのせいで文意が伝わりづらくなってる。元の文章はこう。
"… I didn’t really grow up feeling very conscious of my race because I grew up mostly in international schools where we were all from like 80 different countries in the world. I’ve always just felt like a human being. I just always wished it was simpler. Like just that we could have just like, not think about that so much,”
私が訳すとこう。
「私は自分の人種をそこまで意識することなく育ってきました(※ こどもの頃、10代の時期をそう過ごした、という意味)。というのも、殆どの時期を私はインターナショナルスクールで過ごしたからです。インターは世界の80ヶ国とかの国からの生徒が集まってるような場所だったので、私はいつもただ自分は“人類の一員”なのだと感じていました。(なので)私はずっと人種問題がもっとシンプルだったらいいなと願っていました。そんな風だったので、私を含むインターの生徒たちは、自分の人種についてそこまで(深く)考えることなくいれたんです。」
特に" Like just that we could have just like, not think about that so much,"の部分がわかりにくい。そのせいでここの部分が記事のそれまでと違い逐語訳を放棄した形になったのでは?と推測する。あと、toが抜けてる? 多分これ“we could have not to think about that so much"だと思うんだが確信は持てない。もしかしたらここ、原文の更に元のヒカルとのインタビューでは少し違うかもしれないな。
“Like just that"というのは、文脈からしてその前全体を受けて「そんな感じで」或いは「そんな風に」という言い方に、日本語だとなるだろう。
つまり、ヒカルは、人種の坩堝で育ったので人種的アイデンティティについて深く考える必要なく過ごしてきたのだと。更に、その為、ここが訳す場合はっきりしないのだけど、"wished it was simpler"、「もっとシンプルだったらいいのに」という所の"it"が、何を指すのかというね。私なりに解釈すればこれは「人種問題」か「人のアイデンティティ」かどちらかだと思う。そう解釈すると、ここでヒカルが言いたいのは、
「インターで人種気にせず過ごして何の問題もなかった。みんなもそうしたらいいのに。シンプルで楽だよ。」
といった事になるかと思う。
それを踏まえないと、この次の発言が謎になるのよ、ってのを見るとこからまた次回っ。