無意識日記々

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"I don't get it" (...about what is "T"?)

でその「T」の歌詞なんだけど、全編がヒカル作なのかいうとちょっとわからない。特にキーとなる“Baby that's the T”というフレーズは、向こうから与えられたテーマという気がしなくもない。だが例えば、

“You're always worrying about tomorrow

I don't get it"

訳すと

「あなたはいつも明日の心配ばかりしてて

 それが私にはわからない」

という歌詞なんかは、『光』の

『先読みのし過ぎなんて意味のないことはやめて

 今日は美味しいものを食べようよ』

とか、或いは『Be My Last』の

『いつか結ばれるより

 今夜1時間会いたい』

や『Can't Wait 'Til Christmas』の

『クリスマスまで待たせないで

 人はなぜ明日を追いかける?』

なんかを思い出させて如何にもヒカルが歌いそうな歌詞だと思う。

ただ、今回の場合、

“I'm sitting on your bed with my jacket on

and you tell me”

訳すと

「私は自分の上着を着たまま

 あなたのベッドの上に座ってて

 あなたは私にこう告げる」

の一節がまるで

『完璧なフリは

 (腕時計と一緒に)外して

 ベッドの横に置いて』

との対比となっているように見えるため、

『明日から逃げるより

 今に囚われたい』

の一節と併せて、最も連想・想起させてくれるのは『誰にも言わない("I won't tell")』だというのが、第一印象での自分の感想だった。

「あなたは明日の心配ばかりして」という一節だけなら、ヒカルの作詞を考えたことのある人ならトリビュートの一環として考えついてヒカルに歌って貰おう、となる可能性もあるかなとは思ったが、次の

“I don't get it”

(理解できない/釈然としない/要領を得ない/納得できない、といった意味)

の歌い方に実感が隠っている様や、外す腕時計と着たままの上着(ジャケット)というアイテムの表層の堆肥化も併せて考えると、少なくともここらへんはヒカルの作詞なのではないかなと推察された。

このEPもつい最近完成したばかりということらしいが、ずっと続くヒカルらしい主張の詞とここ数年顕著な巧緻で小粋な言葉遣いをフィーチャーしたこの曲は、まるっきりヒカル名義の新曲ということではないにせよ、2022年初頭の宇多田ヒカルの空気を控えめに伝えてくれる押さえておくべき嬉しい1曲ということは言えそうだと思います。