無意識日記々

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今日はそんな気分じゃない貴方へ

あとから読んだ時、今日の日付でググれば今昼に何があったかはわかるのでその事には触れずにおく。ただ、読者の皆さんが今日というその日にここに来たとして、果たして、楽しく軽快なマルセイユ辺りの話を聞きたいかというと、申し訳ないですが今はそんな気分じゃありませんのと言われそうな気がしなくもないので、今夜は『気分じゃないの(Not In The Mood)』の話をしようかな。

まず、今日お昼以降の報道があってからまだ『気分じゃないの(Not In The Mood)』を現実に聴いていないという人が居たら、寝るまでに、或いは眠り入る前に、この曲を流して傾聴してみて欲しい。きっと少し癒される。イヤなことがあった日や、ウンザリすること、落ち込むことがあった日の最後にこの歌を聴くと、元気づけられるというのとはまた違うのたけど、兎に角、癒される。それこそ、まるでヒカルさんに寄り添って貰ってるようにね。

ここで空気を読まずに技術的な話をすれば。この曲はサビのコーラスに於いて

『Rain, rain go away

 Fall on me another day

 Rain, rain go away

 I'm not in the mood today』

『雨、雨、どっか行け

 また今度にして

 今日は気分じゃないの』

という歌詞とメロディーを使って「今日はどうしても落ち込んでしまう。もうイヤなことがこれ以上私に襲いかかってきませんように。」という感情を描写する。聴き手はここに共鳴・共感したあとに間もなく

『Hey how are you ?

 How has your day been ?

 I've been quiet

 Just didn't know what to say

 Hey how are you ?

 How has your day been

 I've been quiet

 It's just one of them days』

のメロディーと歌詞に巡り合うのだ。この構成がとても丁寧で聴き手の気持ちに寄り添ったものになっている為、この曲はたまらなく愛おしい。私たちの塞いだ心にまず共感してくれてから、優しく優しく語り掛けてくれる。激しく励ますでもなく、かといって共感しすぎて一緒にズドンと落ち込んじゃう訳でも無い、ただありのままを眺めて、今日という一日が終わったね、今日という日を生きたねと、ありのままを語ってくれる。こんなに優しいことはない。今まででいちばん宇多田ヒカルらしい、いや、宇多田光らしいメロディーと歌詞かもしれない。そう私は思うのだ。こんなにヒカルを身近に感じられた事も、なかなかなかったのではないか。

蛇足気味だが、上記の英語歌詞の部分の私の日本語訳を再掲しておく。少しでもニュアンスが伝われば幸いだ。

「ご機嫌いかが?

 あなたの一日はどんなでしたか?

 私は独り静かに過ごしてました

 何とも言えない1日だったから

 ごきげんよう

 今日はどんな日でしたか?

 私は殆ど誰とも話しませんでした

 まぁ、そんな日もあるよね」

うん。

『気分じゃないの(Not In The Mood)』は、アルバム『BADモード』でいちばん最後に出来た曲だ。タイトルトラックが

『わかんないけど

 君のこと絶対守りたい』

と力強く勇気づけてくれる一方、『気分じゃないの(Not In The Mood)』は「そんな日もあるよね」と力を抜いてそっと寄り添ってくれる。硬軟どちらのヒカルもやっぱりヒカルだ。この両極端を表すために、"Bad Mode"と"Not in the Mood"は語感が対になっている。BadとNot、ModeとMood。アルバムタイトルを"Bad Mode"にした以上、どうしても"Not in the Mood"というタイトルが、必要だった。それが宇多田ヒカルのとるバランスなのだ。

で、その最も肝心な言葉、『Not in the mood』の歌詞とメロディーを息子に託す結果になったのは、ヒカルも話している通り、全く予期していなかった事に違いない。意外な所から未来は拓ける。将来への展望や希望がやってくる。今日は、貴方も塞ぎ込んだ気分かもしれないが、世界のどこかではこどもたちが笑って帰ってきてる一日でもあるんだ、きっと。どちらも、今日という日を過ごした結果だ。いいも悪いもない。Badに対するNotなのだ。うん、今日は寝るまでに、もう一度この歌を聴いてみようかな。