うぅむ、珍しく「時間をくれ」と言ってみたが考えてもわからないことだらけだったわ『君に夢中』のヒカルさんの“謎かけ”。
『こう、恋愛に、夢中にもうなれない自分と、なってた頃の自分と、でも、それでも、なれなくなってる他の人の話聞いててもなりたがってるよね、っていう人の気持ちも全部込みで考えた結果、ちょっとメタな感じの、一歩引いてるような、不思議な…歌になったのかなって思います。』
この言葉から
① 恋愛にもう夢中になれない自分
② 恋愛に夢中になってた頃の自分
③ 恋愛に夢中になれなくなってる他人の話を聞いても、夢中になりたがってるよねっていう人
という風に3人、3通りの歌詞に於ける“登場人物”を考えてみたかったのだが、どこをどう掘っても③にあたる人が出て来ない。んだもんでちょっと考えてみるから時間を頂戴ということだったんだが、やっぱりわからなかった。
『君に夢中』がドラマ「最愛」の主題歌である以上、歌詞の登場人物の幾らかは確実にドラマの登場人物とシンクロしているはずだ。
その点、①と②はわかりやすい。そもそもこのドラマは「15年前」と「現在」を行ったり来たり、橋渡しをしながら進行する。15年前に高校生だった頃の大ちゃんと梨央の真っ直ぐさが①ならば、15年経って社会人になってしがらみに囚われた現在の状況が②である。それが、2人が再会することで①の側面を取り戻していくというのがドラマの主題の1つであった。『君に夢中』は端的にその点を見抜いている。
しかし、③にあたる人物が見当たらない。この2人に続く登場人物といえば当然「加瀬さん」なのだが、梨央と優の人生に献身的であることをそもそも「夢中」と呼ぶのかどうか。それに続く登場人物はその梨央の弟の「優」だが、こちらは「夢中」というワードの“裏を抉る”人物だ。
『人生狂わすタイプ』
『まるで終わらないDeja-vu』
『火がつくと止められなくなる』
『普段から大人しくて』
『どの私が本当のオリジナル?』
『科学的にいつか証明される』
『私が私を欺く』
などなど、歌詞全編に渡って、恋愛に夢中な人の言葉に見せ掛けて総て「激高すると記憶を失う」という「頭部外傷によるびまん性軸索損傷」(覚えてなかったので流石にググった)の症状や所感を表現した歌詞になっている。ここらへん宇多田ヒカルの作詞術の卓越した所だが、しかし、ではこれらの歌詞が③の人物に当て嵌まるかというとかなり無理がある。梨央が夢中になる相手は優でも大ちゃんでも時に加瀬さんでもいいけれど、だが、それらを俯瞰する人というのは結局やっぱり存在しない。
もちろん、ドラマの最終回まで見越した上で加瀬さんの歌だと読み解きなおす事も出来るのだが、ヒカルが作詞前に台本を貰ったのは3話か4話までだった筈で、具体的な事は知らされていなかったのだから、そう読み解くことがヒカルの「歌詞執筆時の意図」にそぐうかというとこれもまた微妙だ。
という感じでこのテーマは暗礁に乗り上げているので一旦寝かすことにしますわ。何か気がついたらまた書きますね。