無意識日記々

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『スネアの切なさ』2023年最新版

そして『First Love (Live 2023)』が泣ける。堪らんな。(そればっかかおぬしは)

https://twitter.com/i_k5/status/1629253566119690242

先日今回の予告代わりにツイートをひとつ投下しておいたが、そう、このトラックは2番のAメロから入ってくるドラムスが泣けるのだ。『立ち止まる時間が動き出そうとしている』の歌詞に合わせて動き出すリズム隊。ここはどうしてこんなにも切ないのだろう? それは、この曲の成り立ちに思いを馳せれば然もありなんなのよ。

『First Love - 15th Anniversary Deluxe Edition』に収録されている『First Love (Demo Version)』を引っ張り出して聴いてみる。すると、ドラムスのハイハット(・シンバル)が、この『40代はいろいろ -Live from Metropolis Studios』収録の『First Love (Live 2023)』と同様に8ビートを刻んでいる事が聴いて取れるだろう。そう、この曲は制作段階ではしっかりとしたリズムが刻まれたトラックだったのだ。それが、スタジオ盤に収録される頃にはストリングスとピアノを主体にしたビートに変換されている。ハイハットの刻みも、拍は同じだがビートではなくゆったりとしたベースラインとなだらかなメロディに沿ったミックスとなっている。

「一旦リズムの入った状態でメロディを載せ、そのあとでリズムを抜く」という手法はこの『First Love』のみならず後の『FINAL DISTANCE』や『Flavor Of Life - Ballad Version -』でも援用された─という話は度々してきた。そんな手順をいちいち踏むのはヒカルが曲を作る時にリズムループからエモーションを導き出すという特異なステップを踏む為であり、それを象徴するのが宇多田ヒカルの“曲作りの秘訣”を端的に表した名言「スネアの切なさ」なのだ。スネアに対する拘りは、2013年に放送された『Kuma Power Hour with Utada Hikaru Episode 3』が1時間丸々スネア特集だったことなどからも明らかだ。

故にこの新しい『First Love (Live 2023)』のバージョンは、先日指摘した通り、長年果たしてきた責任から解放された身軽な感覚という“これからの『First Love』像”を表すと共に、1998年末~1999年3月10日に生まれる前の姿、いうなれば先祖返りのようなニュアンスをもまた含んでいる、謂わば「過去と未来の両方を表現したトラック」なのである。それ故、このバージョンを聴いていると、娘の成長ぶりが小さい頃から成人になるまでの二十余年に渡って記録されたアルバムを捲っているかのような錯覚に陥ってくるのだ。私に娘は居ないけれども!

そりゃグッときますって。だから、『First Love』と共に過ごした時間が長い人ほど今回のテイクは涙腺に響くんじゃないか。私はそう解釈してますが、皆さんは如何でしょ? もちろん、この年末年始で初めて『First Love』を知ったという人も感動してくれてるとは思いますけれどもねっ!