前回はまるで頭を使わずに寝惚けて書いてしまった。内容自体は今後必要になる事柄だから掲載はしたけれど、今時ああいう文章はもうChat-GPTに任せちゃえばよくなっていくのよね。今んとこは適切な質問考えてる暇有ったら自分で書き下しちゃった方がまだ早いようだけど、そのうちそこらへんも強化されるだろう。
もう最近はChat-GPTが普通に一般ニュースで取り上げられるようになっていて自分も対話型AIの進化のスピードには驚くばかりなのだが、使えるツールの性能がよくなっていくのはただただ有難い(まぁお部屋にテラのハードディスクがあるのも20年前なら考えられなかったしなぁ)。今はまだ嘘吐きや真似しい程度だけれど、設計の性質上これからもっとよくなっていくのは確実なのでした。
んで誰かChat-GPTに「宇多田ヒカル風の歌詞を考案してみて下さい」的な質問もう投げた? 私はやっていないのだけど、どんなのが返されるかちょっと興味ある。AIでなくても、「村上春樹ジェネレーター」とか「浜崎あゆみ風歌詞作成機」とか色々あったよね昔から。ああいうのの汎用機がChat-GPTな訳だけど、宇多田ヒカル風歌詞の作成は可能だろうか?
やってない私が予測と推測をすると。恐らく「今までヒカルが使ったことのある単語や言い回しをコラージュした歌詞」は簡単に生成してくれるけど、「如何にも宇多田ヒカルがこんな歌詞を書きそう」と我々が思える歌は生まれてこないと思う。まず最初に「過去の歌の歌詞の使い回し」をヒカル本人がやらないからね、コラージュ風の歌詞だとその時点でもう「ヒカルらしくない」だろうね。
そう考えると「宇多田ヒカルらしい歌詞」って何だろう?という根源的な問いに立ち返る事になるんだけど、やっぱ歌詞の中に一度は「え?今なんつった?」ときき返したくなる「耳を疑う」フレーズが飛び出してくる時だよね、如何にも宇多田ヒカルらしいと思うのは。なんだよいきなり『甘えてなんぼ』って!そこまでの流れでこの言い回し出てくる?いや待って虹色バスで遠足行くのかと思ってたら『誰も居ない世界へ私を連れて行って』??無茶苦茶じゃね?みたいな、こっちが呆気にとられるフレーズが飛び出してくることが宇多田ヒカルらしさなんだと思う。
つまり、「今までのデータから大きくはみ出した」言葉選びでありつつ「いやでもこういう歌詞もアリなのかも??」と半信半疑になれるのがヒカルの歌詞の真骨頂。そういう体験あってこそ「宇多田ヒカルの新曲を聴いた!」という実感が湧いてくるのだ。
なので、多分今後どれだけ今の設計思想でAIが発達しても、どこまで行ってもヒカルの新曲だと騙され得る作詞は出てこないだろう。「宇多田ヒカルの新曲を作ってみて下さい」って言われたらまず過去のデータを漁るだろうからね。もうその時点でヒカルらしくない。初手から無理なんですよ、ヒカルっぽさを出すのは。
…だなんていう予測と推測を私はしているので、今んとこChat-GPIで遊ぶつもりはないのでした。
ただ、質問自体を変えると面白くなるかもしれない。「もしボブ・ディランが宇多田ヒカルの新曲の歌詞を書くとしたらどのようなものになりますか?」みたいな、非常に優れたヒカル以外の作詞家の過去の膨大なデータを援用して宇多田ヒカルの過去曲データと魔合体させれば、何か新しいものが生まれる可能性はある。でもそれが「宇多田ヒカルらしい」かというと疑問だけど。それに、結局の所それが我々に「ひょっとしたらアリかも?」と思われる為には、幾つも出力して我々がその都度評価しなくちゃいけなくて、結局の所チューリング・マシーン(入出力と静的な環境)の枠組でAIを進化させても、「向こうからは何も言ってこない」のだ。スイッチ入れなかったら終わりなんだもん。
つまるところ、ここまでAIが発達しても、彼らは創造的ではないのだ。人のやってる事を後からまとめてるだけだからね。ただ、ヒントを生成する能力は非常に高い。候補の羅列だね。でもそれは、ワープロに漢字変換機能がついた時からずっとなのよ。筒井康隆が「誤変換による音韻の気づきが創造性に寄与する」点について指摘してたのはもう多分昭和の時点でだったと思うが、そういうヘルプとしては非常に有用だ。誤変換も対話型AIがも、どちらも同じくらいに。だからもしかしたらヒカルも質問を工夫しながらChat-GPTをはじめとした対話型AIを“うまく利用して”作詞の助けにしていく未来は、案外すぐにやってくるかもしれない。まー辞書をパラパラ捲って当てずっぽうに指した単語から作詞スタート!みたいな方法と原理的には変わらないからね、それによって面白い作詞が増えていくんならいいことですよ、えぇ。