「キングダム 運命の炎」のプロデューサー松橋真三氏のコメントで、いちばんふるってるのはココだろう。
「物語に涙し、優しい気持ちになり、人の可能性に希望を託す、人間の本質は「光」であると、そんな美しい歌をお願いしました。この作品を包んでくださるのは宇多田さんしかいないと。」
https://rockinon.com/news/detail/206486
要約すると、
「人間の本質は光だから宇多田光に主題歌を頼んだ」
ということだ。ダジャレかな? うむ、真理だね。
「人間の本質は光」というのは吉沢亮くんのセリフになるらしい。詳しいことはわからないが、平たく言えば性善説のことのようだ。ふむ。
そして斯様なオファーに対して返した歌のタイトルが『Gold』だったという点は特筆に値する。人間の光の輝きがGoldだということだろうか。
宇多田ヒカルの歌のタイトルでGoldといえば一も二もなく『Stay Gold』が思い起こされる。ここでのGoldは、
『My darling, Stay Gold
無邪気に笑ってくださいな
いつまでも』
という文脈で現れる為、その意味はどちらかといえばinnocenceに近い。そう、『Goodbye Happiness』の
『So goodbye innocence
何も知らずにはしゃいでた
あの頃へはもう戻れないね
君のせいだよ Kiss me』
の所に出てくるinnocenceだ。ここでは「純真無垢」という意味で使われている。それが『Goodbye Happiness』では上記の通り喪われるものとしてノスタルジックに描かれているのに対して、『Stay Gold』では無垢なままでずっと笑っていて欲しいと歌っている。これを素直に「正反対だね」と言うのを憚られるのがヒカルの作詞術なので、ここではただそれぞれがそうなっているんだねと確認するに留めておこう。
今回の『Gold ~また逢う日まで~』にも、同様の作詞術が巧まれているかもしれないのだからね。確かに、Goldというのは「若さや幼さ故の純真無垢な輝き」という意味もあるが、一方で…例えば“Golden Wedding”だと金婚式、即ち「結婚50周年」のことを指す。つまり、積み重ねて老いた挙げ句の“Gold”もあるのだ。
そして宇多田ヒカルの歌詞で50年と言えば、そう、『嫉妬されるべき人生』の
『今日が人生の最後の日でも
五十年後でも あなたに出会えて』
の部分の歌詞が思い出される。今日死んでも無事生き残って金婚式を迎えても、とかそういう意味なのだろう。
となると、この新曲のタイトル『Gold』は、若さ故の純真という意味で使われているかもしれないし、一方で「人生を無事に生き抜いたこと」もまた意味するかもしれない。戦争物の映画なのだ、いつ誰が死ぬか、誰が生き残るかわからない。その中で輝きを喪わずに生きていけるか、とそんなテーマを歌っているのではないかと想像を逞しくする。実際、
『いつかまた思い出話する日の
花になる迄』
の部分の歌詞は、若き日を思い出す部分と、それを語る老いた未来を想像する部分の合わせ技という感じだ。これは『Passion』の
『思い出せば遙か遙か
未来はどこまでも輝いてた』
にも通じますよね。うん、ここの輝きもまたGoldだったのかもしれない。
…えぇっと、やっぱり「キングダム」の原作漫画やアニメで予習するべきですかね私? 毎日悩みながら行きたいと思います。