無意識日記々

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君たちはどう生きるか

映画を観てきた感想をつらつらバラバラに箇条書き的に。

最初ゆったりめから後半加速していくこの感じ既視感あるなと思ったらあれだ、村上春樹の長編てこんな感じだわ。現実とそうでない世界の橋渡し方とかね。まぁ元々似てるとこあったけど、今回は特にそう感じた。

しかし前作の「風立ちぬ」同様、キャラデザが地味よねぇ。こんなんで売れるんかいなと思うけどその「風立ちぬ」がしっかり興行収入100億円突破したっつーんだからあたしゃ世間の風が読めてないなぁ。隣で観てた家族連れも全員レイトショー最後まで寝ずに観てたし、案外楽しめるもんなのかも。

描く主題は「もののけ姫」以降30年ずっと変わらず「漫画版ナウシカで提示した主題を幾つか抜き出して再構築したもの」。今回も様々なモチーフに類似したものあったわね。いつもどおり、うっすらと、だけど。まぁそれは観てのお楽しみ。

音楽が悲しかったなぁ。その場その場で適切なコードとアルペジオを導入するとこまではいくけどそのあとにメロディが展開しない。ハウルほど鮮やかに決まらなくてもいいんだけど、「ここで曲が流れたら名場面になったろうに」というとこで和音鳴らすだけで終わるの繰り返されたら流石に「もう久石譲でなくていいでしょ」と言わざるを得ず。いやま、宮崎駿が「絵の邪魔にならない音を」という指示を出してるのかもしれないけどねぇ。だとすればますます久石譲でなくていいでしょ。AIで十分じゃんこんなん。あー残念。

翻ってエンドロールで流れる主題歌は秀逸の一言。映画を全編観たあとで「でこの映画結局何が言いたかったの?」というのをしっかりと言葉で表現してくれていてなんて親切な歌なんだと感心した。或いは監督自身も気づけなかったことに気づけたのかもしれないけど、この歌を生み出した時点でこの映画は成功って言っていいと思う。

勿論本編も素晴らしかった。アニメーションのクォリティは毎度ながら凄まじいの一言。時々ハイジやカリオストロの頃から変わらぬ原始的な技法を挟んでくれたのはサービスなのかな~。車とか鳥とかね。いや楽しかったわ。

しかし、この稀代の、ひょっとしたら史上最高のアニメーターの最高傑作にして(アーティスティックな意味合いにおいての)代表作が「漫画」っての、皮肉が利き過ぎてやしませんか神様。

細かい設定の説明全部省いてたけど、それ説明してたら2時間で収まらないもんね。ああいうの事細かに描写してたら20年も30年もかかっちゃうのよ。ねぇ尾田先生? まぁ結果的に「動く絵本読んでるみたい」な印象になったわね。ぶつ切りのカット割り、全部端折った台詞回し。絵本そのものだな。それもまた宮崎駿らしくてよかったわ。

ただ、アニメ自体は凄いけど今回は前回みたいに統一感のあるコンセプトってのがなかったなぁ。地(泥)・水・火・風の四大要素、ってとこかもしれない。それだとかなり欲張りさんだねぇ。それこそ2時間じゃ足りませんわ。

結論としては…ここ30年の作品と変わらないので、それらが楽しめる人なら楽しめる、かな。理詰めで物語を追いたい人はラピュタで止まっておくのが賢明か。シークエンスのまとまりではあれに敵う作品はないもんなぁ。よくあれ2時間に詰め込んだよね未だに教科書だよあれは…。

「描きたい&動かしたい絵」がまずあって、それをかき集めてつなぎ合わせて物語にする、っていう「人生の長さを考慮したかなり無理やりな作り方」をした映画がどうしてここまで大衆を魅了しているのか、未だに謎よな。。。

と、言いつつ、今回の作品をみても全然引退するつもりなさそう。また次回作を手掛けるつもりでいるんじゃないか?ってくらいいつも通りで特別さのないスタンス。或いはもう前からずっと「常にこれが遺作のつもりで」作ってるのかもしれなくって、そういう意味ではこれもまたそう、という見方もできる。でも、120歳まで生きる気満々だよねぇこれ…センスが老いてない、枯れてないって信じられないわ。久石譲はとっくに…いやなんでもない。

ただ、こちらの目が悪いからか、「銀幕のサイズならではの迫力」ってのが今回あんまりなかったなぁ。家で観てても変わらなそうで。背景も美しいし、全く申し分ないと思ったんだけども、不思議なもんだな。音はよかったけど、でも昨今の風潮からするとミックスは普通って感じか。効果音のハマり具合は見事だったけどそれも今に始まったことじゃないしなー。久石譲の出してる音も「ただの効果音」としてなら秀逸だった。「音楽」としてみようとすると、なぁんもない感じになってしまったな…つくづく昔は・・・ってもうしつこいからここで強制終了(笑)。てことで宮崎駿健在でした。80歳越えていきながらでもこんな作品作れるもんなんだね。嬉し凄い。