無意識日記々

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『花』とは彩りを添えるもの




さてさて、ドラマの話はそれくらいにして歌自体にフォーカスしていこう。歌い出しからドラマのタイトルに寄せてきてはいるものの、宇多田ヒカルの新曲なのだから、ドラマの内容に依拠しない、曲それ自体で独立した歌詞を持っていると捉えて問題ない筈なのでね。


とはいえ、曲タイトルの『何色でもない花』の『何色でもない』の部分は、ドラマでキーワードとなっている「五感」についての表現だと解釈するのがわかりやすいかなとも思ってる。ここでの「色」とは視覚に留まらない、もっと広義な「色」の事になるだろう。そもそも聴覚だって「音色」という表現を使ってその世界の多彩さを伝えてくれているのだし、「色が付く」とか「色に染まる」とかになるともう五感から離れてイメージの世界だ。ヒカルの歌詞でも、例えば『Passion』の


『懐かしい色に窓が染まる』


なんてセンテンスは、具体的に赤や青の色に染まるというよりは、窓に入ってきた光が昔を思い出させるということなのだろうし、『COLORS』の


『今の私はあなたの知らない色』


というのも、別に着てる服のことじゃないのはすぐにわかるだろう。


となると、「何色でもない」ってそんなのに当て嵌まるものはあるのかと、逆側に心配が倒れそうになる。何にでも色ってつけられるじゃん、と。ならばとここで思い切って「五感では捉えられない」と極端に解釈すると見通しがよくなる。目には見えない、耳でも聴けない、舌でも味わえない、鼻でも嗅げない、手でも触れられない、それでもそこに間違いなく在る何か…端的に言ってそれこそ「心」だろうと思うのだけどそれに関してはドラマの今後の展開に任せるとして、ヒカルはここで『花』という言葉を持ってきた。ここのセンスよな。


この『花』に関しては、前にも触れた通り『Gold 〜また逢う日まで〜』に出てきた


『思い出話の花』


での使い方、使われ方にかなり近いと思われる。『Gold〜』での『花』は「華やぎや嬉しみ、彩りなどを添えるもの」という意味だ。思い出話を単なる回想で終わらせず、その場を楽しいものにする何かを花と形容しているのだった。


なのでここでも、『何色でもない花』の『花』は、「彩りを添えるもの」という意味が託されていると捉えると見通しがよくなると考える。何色でなくても彩りが添えられるというのは一見矛盾を孕みそうに思わせながらも如何にも本質を突いた表現になっていて、タイトルだけ、歌詞の1行目だけでこれだけ豊かなイマジネーションをもたらしてくれるとは、やっぱりヒカルの歌詞の語感は味わい尽くし甲斐があるわ。そりゃあ、あなたの五感を直撃するよね、「ヒカルの語」はねw