『DISTANCE (m-flo remix)』は、驚きの連続だったSFツアーのセットリストの中でも最大のサプライズ選曲だったと言う人も多かろう。誰かひとりでも予想してた人居る? 私は知らないが、これが案外いらしてたりするから毎度宇多田ファンは恐ろしい。それはさておき。
そして、サプライズであるとともに、おおいにクエスチョナブルでアンリーズナブルでもあったともいえる。「!」かつ「?」だったってことだね。
大体において、23年前にリリースされた、当時の宇多田ヒカルにしては珍しくオリコン初登場第1位を逃したシングル盤の、しかもリーダートラックはテレビでのプロモーションを拒否した楽曲な上、そのカップリングとなったオリジナル・バージョンの、さらにそのリミックス・トラックって、後追いファンの君が事前にチェックしていたらそれだけでもう偉いよ。サブスク時代になって過去音源に辿り着き易くなってるとはいえねぇ。公式が掘り起こした事は殆ど無いし、よほど自発的にディグらなければ出て来なかろう。
一方古参は大歓喜だった人も多い。『ヒカルの5』で『DISTANCE』を聴いた、『UTADA UNITED 2006』で『FINAL DISTANCE』も聴けた、そしてSFツアーでリミックスも! これだけ毎回多岐に渡るバージョン違いを聴かせ続けてきた曲も他にない。ああいや、『COLORS』なんかは毎度ライブアレンジが違っていて凝ってるけど、ここでは「そもそもスタジオ・バージョンのバリエーションが多い」って話ね。
しかも、楽曲としての存在感が宇多田史の中でも飛び抜けてるよね。オリジナルの『DISTANCE』がセカンド・アルバム『Distance』のタイトル・トラック扱いだし、『FINAL DISTANCE』は続くサード・アルバム『DEEP RIVER』の要の位置(インスト前)に収録されている。二つのアルバムに跨って楽曲が収録されるなんて前代未聞…って書こうとしたけどすぐ前にヒカル自身が『Interlude』と『言葉にならない気持ち』でやってたな。まぁでも、かなり珍しいってことで。
そんな重要な楽曲のリミックス・バージョンを敢えて取り上げた理由の一つに、このあとに演奏された『traveling (Re-Recording)」の共作者がそのm-floのTAKUさんだったというのはあるだろう。ちなみにだが、福岡初日に事前にセトリを知らずに臨んだDJ YANATAKEさんがこの『DISTANCE (m-flo Remix)』と『traveling (Re-Recording)』がライブで歌われた事をすかさずTAKUさんにLINEで報告したらTAKUさん大歓喜だった…という先日のStationheadで披露されたエピソードって、こないだここに書いたよね?(もう忘れてる私)
発想としてどういう順序だったかはわからないけれど、『traveling (Re-Recording)』の持つ“Celebratory(祝祭性)"という性質が、この「みんなの25年を祝う」という『SCIENCE FICTION TOUR 2024』のコンセプトにダイレクトに合致した為、同じくTAKUさんが従来から持つサウンド・テイストがそのまま連続的に接続された、ということなんだろうな。
そして、そのトラックが前回まで触れてた『For You』と連続的に、メドレー形式で繋がって演奏された点にメッセージ性を感じるのよね…という話からまた次回、というかそれこそが前回からの続きだよね!? まぁ毎度のことだけど、その時の気分次第だわね貴方はね。(溜息)