無意識日記々

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振幅論

SC2DISC2の驚異的な所は、たった5曲なのに多様性においてフルアルバム2枚からの選りすぐりであるDISC1を上回っている所である。

振り幅、振幅とはその幅の大きさとともに、どちらの方向へとぶっ飛ぶかという点も大きい。様々な評価軸があるだろう。

サウンドの重さ軽さという点ではフルバンド編成で重戦車のように迫ってくるShow Me Loveの迫力は過去最高だし、基本ピアノ一本、いやアカペラでも通用するCan't Wait 'Till Christmasのシンプルさも過去最高だ。

歌詞のPersonal/Popular比率を考えると、本人がカマトトとまで言い切ったCWTCのラブリーな世界観は世間がPopsに求めるものに見事に応えていて、ここまで振り切れてサービス精神を発揮したのは過去になかった一方、嵐の女神では最も個人的な想いを震える足を抑えながら歌いきっている。この振り幅もまた凄い。

サウンドのミクスチャー具合もぶっ飛んでいる。愛のアンセム、誰がシャンソンとジャズのスタンダードナンバーをこんな風にマッシュアップしようとするだろうか。また、Goodbye Happinessではクラシカルな弦楽隊と聖歌隊を従えてダンスビートに載せ、Japanese Popsの神髄ともいえる優しいメロディを歌い上げる。超天才アレンジャーの到達したひとつの極地といえる。

なのにShow Me Loveでは逆になんのギミックもなく王道中の王道のハードロックを聴かせる。手法的に何の斬新さもなくても楽曲の力だけで押し切れるパワーもまた、今までになかったものだ。

歌詞の私的さ公的さの振幅、サウンドのシンプルさと複雑さの振幅、斬新と古典、融合と独立、軽重硬軟明暗静動総ての振幅において、あのダイナミックなULTRA BLUEHEART STATIONを上回る。こうなるとどうしても「今の状態でフルアルバムを作ったらどうなるのだろう」と考えてしまうが、優秀なコンホーザーはここで足を勇まない。一歩々々、なのである。

とはいえ、復帰後のハードルが非常に高くなってしまった感はどうしても否めない。いったいどうやってこの大きな山を越えるのか。山は登ったら降りるものだとはいえ、次に登る山が前より低くて満足できるとも思えない。多分、光本人もまだ具体的には何も考えていないのだろう。それまでは我々は、今眼前にある高くて近い景色を存分に堪能しておくこととしよう。