無意識日記々

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ka/ta/o/moi, keep/try/in/tryin

あるジャパニメーションで「頑張れ!」という科白があった。その時の英語字幕は「Keep Trying!」であった。日本語を英訳する位だから宇多田ヒカルを知っていても不思議はないが、そんな訳で今週もキプトラ話である。


『片思い』の話であった。一方通行の恋愛感情を表現する語としてこれよりシンプルな語はないといえる位代表的な単語だが、まさにそれこそKeep Tryin'にとって僥倖だった。『かたおもい』と『keep tryin', tryin'』が韻を踏むからである。

五つの音素から成るフレーズである。まず冒頭の音が"か"と"keep"、即ち第1音は[k]で揃っている。第2音は"た"と"try-"、同じく[t]で揃っている。第3音は"お"と"-in'"で、これは異なる母音で揃っていない。第4音は"も"と"try-"でこれも揃っていない。第5音は"い"と"-in'"でばっちり[i]だ。5分の3と半分以上の音素が揃っていれば人間には十分音韻として響く。

これは、奇跡的な事である。前編であるPassionは『じょうねつ』の物語で、Single Versionでは最後『しょうねん』が『かたおもい』していると匂わせる歌詞である。そういったキーワードたちを悉く織り込み更にPassionから『いつまでも』というフレーズまで引き継いだ。それら総てがタイトルでありリフレインである"keep tryin'"に結び付いている。ここまで意味と由来のある語で"埋め尽くされた"パートは、ヒカルの歌詞の中でも稀かもしれない。

これだけ"埋め尽くされている"からには、それに続く語にもきっとエピソードがあるに違いない。その通り。「何故"お兄ちゃん,車掌さん,お嫁さん"なのか」という疑問に答える為には(忘れ去られているかもしれないが、この連載の目標はこの問いに答える事である)、まだまだ他の語についても概観してみねばならない。

さてキプトラの最後の大サビで全く触れていないフレーズといえば、『お値段つけられない』である。ここの音韻の解説をしよう。

そもそも値段がつけられないとはどういう事か。受け売りだが、これをわかりやすく説明するには英語を用いるとよい。英語でValueとは価値、Priceとは価格である。お値段とは後者の価格の事だ。さてそれらの派生語に"Valueless/バリューレス"と"Priceless/プライスレス"がある、それぞれ、「価値がないこと」「価格がないこと」を意味する。前者は文字通りの意味だが後者は転じて「(価格をつけて取引するなんてとんでもない位に)価値のある事」となる。プライスレスというフレーズはテレビなどでもよく耳にする筈である。バリューレスと併せて覚えておけば間違いは少ない。

余談が過ぎた。つまり『お値段つけられない』とは「この上もなく価値がある」と言っている訳だ。で、ここから次の話は時間がなくなってしまったのでまた次回。ホントに余談が過ぎてしまった。