無意識日記々

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後半主題提示部分解説

ピアノによるアルペジオ主体の前半は単和音の連続打鍵に姿を変えて後半の楽曲を終始貫く。それを背骨にして後半は後半で主役となる旋律が登場する。『私たちの続きの足音』の直後、2:40頃に左側からアルトのピアノで奏でられる主題がそれだ。

この主題が2回繰り返された後ドラムが入ってきて楽曲の調子は激しさを増す。旋律自体が徐々に沈み込むような音符の配置を持っているが、ここでピアノは更にオクターブを下げ、より楽曲の重厚感は増してゆく。歌は『Everybody finds love in the end』の所だ。ここでもこの主題を2回繰り返した後、『もう二度と会えないなんて信じられないまだ何も伝えてないまだ何も伝えてない』の箇所に至る所で更に更にオクターブを下げる。しかしその最低音を担う役割は左のピアノから中央のエレクトリック・ベースにバトンタッチされる。

斯様に桜流しの後半は「三段重ね」の構成によって、ただでさえ単体でも沈み込むような旋律を、更に更に深く深く物語の中に潜み込ませてゆく。一方で「私たちの続きの足音」はこの間全く調子を崩す事なく淡々と奏でられ続けていく。この対比。こうやって主題が徐々に沈み込んでいく事で主人公の絶望の深さをひとつひとつ辿っていった挙げ句の『まだ何も伝えてない』なのだ。絶望の深さの表現。それに伴い、最低音へと移行していった後の空間を埋めるように、或いは押し退けるようにギターやストリングスが続々と切り込んできて楽曲は迫力を増してゆく。その一回目の頂点が二つ目の『まだ何も伝えてな(ぁ)い』の一節だ。いや、この一節の『(ぁ)』こそこの楽曲のハイライトにして後半の転回点といえるだろう。というのもここで急転直下、さっきまでひたすら沈み込んでいたあの主題たるベースラインが、まるでその『な(ぁ)い』の高音に引っ張られるようにして突如上昇音へと変化(へんげ)するのである。ここの鮮やかさ。
ここから『開いたばかりの花が散るのを』、と楽曲の冒頭と同じフレーズに戻ってくるのである。鮮烈なる起承転結の構成美。本当に見事という他はない。素晴らしい。